飴
翔はキラキラと輝くビー玉を太陽に翳した。
薄い水色をしたそれは太陽光を乱反射させている。
葵はそんな翔を横目に駄菓子屋に入り、一つ、買い物をした。
「あげるよ」
駄菓子屋から出てきた葵を迎えて、翔は大玉の飴を手渡された。
砂糖のまぶされた、甘そうな飴玉だ。
それはビー玉と揃いの色をしていて、光を反射こそしないが、可愛らしくて綺麗だと思った。
「ありがとう」
口に含んで、懐かしい。と思う。
ころころと転がして、口の中で少しずつ溶かしてゆく。甘い、砂糖の塊。
「懐かしい味がする」
手にビー玉を握り締めて、口には飴玉。
それは幼い頃の記憶に似ていて、翔は懐かしい温かさを覚えた。
「ねぇ葵ちゃん。
昔、よくおばあちゃんが飴玉をくれたの。私おばあちゃんが大好きだった。
葵ちゃんには今、大好きな人はいる?」
葵は少し考えるような仕草をして、それから、人差し指で翔を指差した。
翔はにっこりと笑顔になって、駄菓子屋に入って飴玉を一粒買ってきた。
「あげるよ」
大好きな記憶を、おすそ分け。
翔は屈託なく笑う。
葵は少し驚いたような顔をしながらも、飴玉を受け取って口の中に放った。
これからはこの飴玉の甘さに、大好きな記憶が乗っかってくるのだろうか。