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邑上奈津美
邑上奈津美
novelistID. 24161
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貴殿の御両親が御乱心です 1

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≪貴殿の御両親が御乱心です 1≫

 「総ての生き物にとって最大の不幸は親を選べないことである…と、思う」


 事の起こりは約3年ほど前、父方の祖母・光子に痴呆の初期症状が現れた事から始まった…
 そのとき、母方の祖母・鈴は既に重度の認知症。そのおかげで兆候にも気付き、覚悟もしていたので、私も家族も冷静だった。
 私の母・佳代は「近くに住んでいるんだから、力になれることがあるなら喜んでやろうね!」と言っていたが、父・孝は「かかわらない方が良い。貴女が傷付くことになる。」と苦い顔。

 父の発言は正しかった。


 実の親に対して辛辣な発言をする我が父…過去に祖父母と何があったのかすら話すのを嫌がっていたが先日、お酒に酔った勢いで子どもの頃の思い出を話してくれた。父曰く「僕は一生忘れない…」そんな思い出を…

 それは、父がまだ小学生だった頃。父が「映画を見たい」と言ったため、家族5人で外出した。しかし、映画館で料金を見た祖父は、「こんな高い金払えるか!!」と激昂。
 結局、映画は見ずに帰宅。「交通費が無駄になった」と怒り狂う祖父にビックリな父、祖母は止めとばかりに「あなたが映画を見たいなんて言ったから、主人の機嫌が悪くなったのよ!!どうしてくれるの!!!」と、ヒステリックに叫んだとな…
 語り終わった父は、涙目で「アレがすべての始まりだった…」と言って寝室に消えた。
  
 「始まりだった…」のなら当然「続く」わけで…幼少期のトラウマ故に、父は実の両親に接触することを酷く嫌がる。 


 
 そんな両親を持つ男と結婚をした女性が母の佳代でした。どういう経緯で結婚したかは良く知らない。何とか口を割らせた情報によると、職場で出会ったとか。
 案の定、母は嫁姑関係でウンザリ…結婚した女性の宿命だ。
 と、言っても最初からではなく、徐々に祖母が敵意を表してきたようで。祖母曰く「孝は宝物なの!」。母はその宝物を奪った悪女…ありがちな嫁と姑
 
 母が祖母に対して「この人は好きになれない」といった感情を抱くようになった印象的な出来事があった。 それは、母が私を身篭り、産み月が近くなった頃のこと…
 母に限らず妊娠・出産は不安になるものです。無事に産まれるだろうか、何か障がいがあったらどうしよう、ちゃんと育てられるかな、などなど考えると限が無い。母は不安な気持ちを祖母に打ち明けた。そんな母に祖母は

 「子どもが障がいを持って産まれるのは母親が悪いからよ。でもね、蛍子は違うの。蛍子は病院のミスで障がい者になってしまったのよ」

 …母はあまりの衝撃に不安は吹っ飛んだ。そして別の何かが生まれたらしい…普通は嘘でも「大丈夫よ!無事に産まれるから。」って言うのが思いやりなのでは?

 ちなみに「蛍子」は父の妹、つまり私の叔母にあたる人だ。先ほどの祖母の暴言のとおり、知的障がいがある。祖父母とも彼女を「恥」とし、あまり人前に出さない反面、外では「障がい児を甲斐甲斐しく世話する素晴らしい夫婦」として、障がい者支援団体の顔役を務めていたこともあった。

 祖母が若い頃は、子どもに疾患や障がいがあると、母親の所為だと言われていた。きっと今でも、そう思っている人がいるのだろう。
 当時、祖母も差別で苦しんだひとりなのに、「障がいがあるのは母親の所為。私だけは違うけど」といった考え方なのか…孫として恥ずかしい限りです。

 そんな祖父母に育てられた叔母・蛍子はある意味一番の「被害者」。「恥」であり「広告」であった彼女に自由はなく、祖父母の顔色を窺がいながら、限られた世界で生きていいる。しかしながら、その環境と自分が障がい者であることを利用し、好き放題やっているため、私にとっては「加害者」でもあった。
 私が小学生の頃、オモチャやヌイグルミを貸りたきり返さないのは日常茶飯事。さすがに耐えかね返却を催促すると、イヤだと大声で泣き喚く。貸すのを拒めば障がい者への差別だと怒り狂う。
 明け方5時前からオルガンを演奏し、近所から苦情が来ても「私は障がいがあって自由がないんだから、それくらい許してよ」と開き直り。
 障がいがあるからといって、何をしても許されると思わないでいただきたい。


 父には妹の他に、巧という弟がいる。私にとっては叔父にあたる。彼は会社を経営しているが、不況の煽りをくらっている。しかし、妻と3人の子どもは会社の経営が危ないことを知らない様子。なぜ彼の家族が知らないことを私が知っているのか…それはまた追々。
 さて、父と叔父の間にも確執めいたものがある。原因は祖母の「孝は宝物!」発言にあるとおり、兄と弟の扱いの差だ。
 祖母にとって、「嫁ぎ先で次の家長となる男児を生む」=「世界征服したも同然」でした。そのため、彼女にとって長男である父はまさに「宝物」。そして、次男な叔父は「予備」扱い。
 しかし、「宝物」扱いな長男はかなり迷惑気味…早々に家を出て独立。「予備」な次男は「あんなに気に掛けてもらってるのにあの態度はなんだ」「いつも兄貴ばかっり可愛がって!!」と、父や祖母に不満が募り、ついに爆発。祖母はわが身と「宝物」を守るべくお金で解決したとか…
 以来、叔父はお金に困ると「兄貴ばっかり!!」と言って祖母から集金しているらしい。ネタにされている兄貴こと父は「かかわりたくない」と顔を覆う日々。

 


 そんな超個性的な父方親族の行き過ぎた行動は、祖父母の老いをきっかけに、さらにエスカレートしていくのだった。