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鏡の世界~異なる世界を繋げ~

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いつからだろう。鏡が自分の姿を映すアイテムではなくなったのは。


はじめは自分の姿がぼんやりと映したのに違和感を覚えたが、鏡が汚れているからだろうと気に止めなかったような気がするし、その頃も考え事をしていた。


だんだんおかしい事に気づき、目が悪くなったのかと思ったがそうでもない。
周りに聞いても、?という顔をされた。
それでも、まぁいいかと思っていた。


自分の姿が見えなくなってきてようやく焦ってきた。
変わりに自分の姿ではない何かがぼんやりと見えはじめた。


はじめに鏡が映したものは、自分が通う学校の校門だった。


鏡に手が触れたのが原因か、鏡に吸い込まれた。


いつもの見慣れた光景だが、少しだけ違和感がある。
 「よ、こんなとこで何つったってんだよ」
不意に誰かに話しかけられ、そちらを見る。
見慣れた顔がそこにはあったが、また少し違和感が生じた。
 「そっちこそ何してんだよ」
 「教室行くに決まってんじゃん。遅刻してっけど、まだ午前中だぜ」
何もないこの学校だが時計だけは校門からでもしっかり見える。
新しく来た校長が、時計を新しくしたとか。
ちなみに俺が入学する前の話。
その時計を見ると、10時30分。
確かに遅刻だが、どうしたものか。正直このまま教室に向かっていいものなのか。
考えていると、
 「お、さては咲ちゃんの事考えてんだな」
 「は?」
 「とぼけんなよ、俺とお前の仲じゃねーか」
 「違うよ」
 「ま、いいけどさ。けどお前、4年間片思いでほとんど話した事ねーんだろ」
 「ほっとけ」
 「んじゃま、他の誰かに奪われん事を祈ってろよ」
そう言って歩き出した。
すれ違いざま、違和感が分かった。
身長が伸びていた。俺より少しだけ小さかった気がしていたが、確実に俺よりあった。
 「今身長なんぼ?」
 「今は176ぐらいだと思うけど」
 「そっか」
そのまま見慣れた顔は、下駄箱に向かっていった。
おかしい。
今、俺の身長は172前後。この短期間でそんなに伸びるわけがない。
それに、俺の片思いも3年間のはずだ。
だが、そう考えている時間もあまりなさそうだ。
10時35分に授業が終わり、にぎやかになるのは当然のことだが、今はあまり人と関わらない方がいいような気がする。
慣れた足取りで旧校舎へ向かう。旧校舎と言ってもそんなたいそうな物でない。
以前の校長が芸術関連の部に力を入れたらしく、美術部や茶道部やらの部室がいくつか存在しているだけだ。
だが俺にとってはかなり好きな場所だ。
人はめったに来ないし、静かで落ち着ける。
それにはじめて遠藤さんと話した場所でもある。
遠藤咲さん。かれこれ3年間片思いの相手だ。