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ミムロ コトナリ
ミムロ コトナリ
novelistID. 12426
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マジェスティック・ガールEp:1 まとめ

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 それを聞いて、深冬は舌を巻いた表情をほんの一瞬だけ見せた。
 が、いつもの氷の無表情をすぐに取り戻す。
「確かに…。でも、さっきヒューケインが裁断剣で斬りつけていた時は?ああ…違うわね。攻撃時に<弾頭>を使って無かったのね、彼は。だから、装甲の破片が飛んできた。私が、<H―EX>で特異体を切り刻んだ時と同じように。…彼は何故、そんなことをしていたのかしら?」
「調べてたんじゃないんでしょうか?飛び散った装甲が、本体へと戻って結合するかどうか。
それで、装甲を引っぺがして損傷部分を固定化する必要があると気が付いたんですよ」
「アレの装甲内部は、階層構造になっていると栞さんは言っていたわね」
「はい。だけど、再生速度は栞さんのスキャン完了速度を僅かに上回っています。EVB兵器(    ウェポン)での装甲全剥離はほぼ無理。だけど、装甲をばらした場合は、再生を行わず残った部位をかき集めて再結合しようとする。その場合、特異体の再生完了時間は部位が飛び散らかった分だけ、物理的な距離とかに影響されると思いませんか?」
 ――変異体の特性。特異体の再生速度。損傷部分の固定化。そして液体窒素。
 ――それらが結び合って、導き出される答えは…。
 そこまで聞いて深冬は、はっとした表情を取った。
「…!まさか、ミミリ。あなたが考えついたことって…!」
 ミミリは、にかーと笑顔を浮かべ、
「えへへ、お察しの通りです。かなり、力任せな荒技ですけど。手伝って頂けますか?」
 危機的な窮地にも関わらず、無邪気に明るく言うのであった。
 深冬はそんなミミリの振る舞いを見て、儚げな笑みを浮かべ目を細めて言う。
「ふふっ…、もちろんよ。所で、ミミリ…」
「はい?」
「あなた、こんな時でも笑顔を忘れないのね。中々出来ることでは無いわ」
 ――まさか、怒られるのでは?素行に厳しい深冬ならそう言っても不思議ではない。
 ミミリは萎縮して、恐る恐るたずねる。
「え?あ…あのぅ、ふ…不謹慎だったでしょうか…?」
「逆よ、感心しているのよ。笑顔の理由、聞かせて貰えるかしら?」
「はい!『ネガティブな時こそ、ポジティブ笑顔』。私の信条です!――…まぁ、亡くなったお母様の受け売りなんですけど。あ、あはははは…」
 照れくさそうに言うミミリ。
 それを見て深冬は、優しく微笑む。
「そう。立派な方でいらっしゃったのね、あなたのお母様は。人生の困難と厳しさを知らなければ、子にそうした事を教えられる物では無いわ」
 そう言われて、ミミリは顔にえくぼを作り、はにかんだ笑顔で返した。
『お二人とも、話は聞いていましたよ!』
「『わぁっ!?」「きゃぁ!?」」
 と、突然。二人の間に、栞の顔(CG映像)が飛び出してきた。思わず驚きの声を上げるミミリと深冬。
 CGホロウィンドウに映る栞が言葉を続ける。
『あらあら、すいません。驚かすつもりはなかったのですが…。ミミリさん、先程話してた作戦の内容、詳しく聞かせて下さい。私なら、脳量子波からでも音声メッセージを作成出来ます。それをデータ化して皆さんに配布しますので』
「おぉー、スゴイですぅー金雀枝さん。そんなことが出来るんですか?」
『はい、金雀枝属はスゴイんですよー。伊達に専用の演算電脳素子積んでません。あ、念じるだけでいいですよ。後は、プログラムが勝手にやってくれますので』
「わかりました。では送ります」
 深冬が、横合いから栞に尋ねた。
「所で栞さん。通信が通る様ですけど、EMP場が収まったのでしょうか?」
『そうですね。凛かナズナさん達が、EMP場を発していた原因を取り除いてくれたのではないのでしょうか?通信ステータスもオールクリアになっているようですし』
 事実、<アクエリアス>のステータスウィンドウを開いてみると、先刻までレッド(不可)だった通信状態が、栞の言う通りグリーン(良好)を示していた。
『どうでもいいけどよ…!うるぁッ!手伝ってくんねぇかな…!ぜぇぃッ!二人ともよ――!!』
 通用路の向こうで、荒ぶる<ラース・カーフ>と波状攻撃を仕掛けてくる変異体達を相手に孤軍奮闘しているヒューケインが、通信回線ごしに怒鳴って訴え掛けて来た。かなり切迫している様子が声の調子からも窺える。
 栞は、カラカラと笑い。
『まぁまぁ、お忙しそうですねヒューケイン。このまま見ていましょうかお二人とも?』
『おぉい!冗談言ってる場合かよ、この『クソ潔癖パッツン』!ふざっけんなよ、てめぇ――!?』
 何が逆鱗に触れたのかは分からないが――それを聞いて、ホロウィンドウに映る栞の顔が一気に陰り、険しくなった。
『…はぁ?なんですって?』
 普段の大らかな調子から一転、ドスの利いた声で言う栞。
『ひぃぃぃ!ごめんなさい!!お願いだから、早く助けて―――ッ!』
『分かりました。始めから素直にそう言って下されば宜しいんです。…さて、データ受信完了。配布致します』
「はい、お願いします金雀枝さん」
 メンバー達にデータを転送する傍ら、栞が言った。
『しかし…なるほど、考えましたねミミリさん。単純ですが、有効な手かもしれません』
 それが、ミミリの作戦に対する栞の評価であった。
「では皆さん、手はず通りに。よろしくお願いします!」
 その言葉を合図に、ミミリが走り出した。