小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」
ミムロ コトナリ
ミムロ コトナリ
novelistID. 12426
新規ユーザー登録
E-MAIL
PASSWORD
次回から自動でログイン

 

作品詳細に戻る

 

マジェスティック・ガールEp:1 まとめ

INDEX|54ページ/80ページ|

次のページ前のページ
 

 鬼百合白銀。後期二年生。リミテッドテンNo.4。白銀の長髪を持つ、長身の美丈夫と言った風情の青年で、なかなか人前に姿を見せない人物としても、公に知られている。
 金雀枝栞が粛々と告げた。
「彼はまだ、新調された<アクエリアス>が調整中です。当分は出撃停止だと伺っていましたが」
「あぁ、そうだったなぁ。サンクス、栞―」
 そこで、すぃ―と、野球ボ―ル大になる球状の構造体がミミリの脇を通り抜け、眼前で停まった。
ミミリは、それを見て不思議そうに首を傾げ、尋ねてみた。
「あのぅ、所でこれはなんでしょう?」
 質問にヒューケインが答えた。
「ああ―、学園新聞部の自律機動カメラだよ。こいつが俺達の活躍をバッチリ、ガッチリ記録してくれるってわけさ。リミテッドテンは、政府の広告塔。マジェスターの活躍を国民に喧伝するためのな。『アクトゥスゥの恐怖に怯える人々に、勇気と希望を振りまく救世主、リミテッドテン』。いわば、俺達はヒ―ロ―なのさ。俗にいう、アイドル<偶像>って奴だな」
 ヒューケインの解説を補足するように、凛が続いた。
「そうして我々は、知名度を活かしてタレントとしてメディアに出演したり、企業の販促
の為、CMにも協力する。リミテッドテンは『キャラクタ―』として、経済効果を生む。
本業以外にも、そうして社会に貢献しているのさ。アクトゥスゥという恐怖を傍らに置き
ながらも人間は日々を送り生活しなければならない。先立つモノは必要だからな」
「『地獄の沙汰もカネ次第』。というわけさ。金がなきゃヒトもモノも動かない。
俺たちマジェスターが戦うのは、恒常的な日常を維持する為。それを見越してのタレント
商売ってわけだね―」
 ミミリは、説明に意を得たようで、
「へぇ―。なるほど納得な、合理的なシステムですね」
「だよな。このシステムを提唱立案したのはフィラなんだ。そういう面でも、あの人は”
やり手”なのさ。なんでも、ミミリちゃんがリミテッドテン入りした暁には、
ツツジと二人で組ませて、双子のアイドルユニットとして歌手デビュ―させようとか言う
話も出ているらしいぜ。二人とも、カワイイからな―」
 ミミリはその事実を聞いて、かつて無いほど驚愕の表情を見せた。おなじくツツジも。
「ええッ、私たちがですか!?」
「マジで!?聞いてないんですけど!歌って踊れるアイドルとか…。うわぁ、やだぁ。恥ずかしいよぉ―…」
 ツツジは、『本気で困った』と言う様子で顔を赤らめた。
 ”普通”であることを望む、常識人である彼女には、この件はかなり刺激が強すぎて、抵抗があるのかもしれない。ましてや大勢の人前に出てパフォ―マンスを行うアイドル歌手など、以てのほか。なにをかいわんやである。
「ハハハ。そういう企画が出ているってだけだよ。ミミリがリミテッドテンにならなきゃ成立しないし、なによりお流れになる可能性だってある。ま、安心しろってツツジ」
 カラカラと笑うヒューケイン。
「そうなることを願います。マジで、切実に…」
 彼とは対照的に、がっくりと項垂れるツツジだった。

 高速艇の眼前までやってきた所で、先頭を切っていたヒューケインがくるりと一同に向き直った。そして、大仰に両手を広げ、芝居がかった口調でこう言うのだ。
「さぁて、お嬢さん(フロイライン)がた。お待ちかねのチ―クタイムだ。軽やかに、勇壮に、華麗に、颯爽と、ダンスホ―ルへ繰り出すとしようか」
 出撃前の縁担ぎと景気づけ。そして、メディア向けにこうしたパフォ―マンスを行うのがヒューケインの習い性だった。が、
「まぁー、そんな…」」
 栞が口元を押さえ、なぜか赤面している。
「娼婦(フロイライン)だと…。ふん、相変わらず下品な奴だ」
 凛に言葉の意味を曲解されて、「ちょッ、ちげぇっ…!?」と狼狽えているヒューケインを尻目に、ミミリはツツジに尋ねた。
「なんか、ヒューケインさんが場を仕切っているような気がするんですけど。どういう事なの、ツツじ―?」
「ああ―。あの人が、リミテッドテンのリ―ダ―だからよ」
 リミテッドテンの公式的な序列では、No.2であるヒューケインだが、その実プランタリアの精鋭達を束ねる立場にある。
「ええっ!?そうなんですか。へぇぇ―、意外です…」
「プラタナスの花言葉は、『天稟・天才・非凡』。マジェスターの人格と性格は自分の属性を表す品種の花言葉を基幹としているのは知っているでしょう。アンタの場合だったら…」
「…フリ―ジアの花言葉は、『純情・純潔・慈愛・無邪気・親愛の情』」
「そ。つまりは、純粋無垢な、ド天然ってことよね」
「あぅあっ、ヒドイですッ!」
「あはは、ごめん。ヒューケインは名前の通り天才なのよ。戦略・戦術・兵法に通じた、典型的な指揮官タイプ。おまけに戦闘もバッチリこなせるね。ちなみにああ見えて、実は科学者なのよ。サンフラワ―の助手も兼ねているし、<M研>のラボに研究室も持っているんだってさ」
「へぇ―、二重に驚きです。意外だなぁ、あんなチャライのに。大丈夫なんですか、<M研>の科学者の選定基準って」
「あのね…。聞こえてるぜぇ―、ミミリちゃん…」
 恨めしそうに言うヒューケインだった。