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なんて謳い文句が付きそうなほど手軽に扱われる彼を見ていると、呆れて物も言えない。

どうせ此方が言った所で聞きゃしないんでしょうけどね。

と口に出して言ってみても、それは自分自身に言い聞かせているだけ。
それでも、口にでも出してボヤキでもしなければやってられない。



恋は盲目。


なんていうけれど、そんなお手軽な言葉で言い表されてしまうほど哀れな存在に腹立たしさを覚えてしまう。


「ねぇ、お兄ちゃんは何処行ったか分る?」

「しらなーい。さっきお兄ちゃん、財布持って出てっちゃったもの」

「また?……まったく、雨降ってきたから車でお使い頼もうと思ったのに」


困ったように言う母には言えない。
他所のどこぞの女に目を晦まされた愚兄が、便利やとしてこき使われているなんて。
知らないで居られたらどんなに良かったか。なんて自分が思う事を伝えたくない。



「……今度会ったら引っ叩いてやろうかしら」


人の兄をなんだと思っているんだと、彼はアンタの都合のいい道具じゃ無いんだと。
ちやほやと兄を侍らせている胸糞悪い女に目に物見せてやりたい気持ちで一杯だ。



それでも盲目になった兄は私を叱るのだろうけど。



作品名:call 作家名:海渡