炉黒一琉の邂逅
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一人暮らしの男性の部屋とは思えない整理が行き届いた部屋、というよりも極端に物が少ないことから整理する必要もないだろう。
七畳半の少し広めの部屋に置いてあるのは、三十二インチの液晶テレビにデスクトップのパソコン、それにタイトルからして難しそうな本が並んでいる本棚くらいだ。
僕を初めとする、蜻蛉さん、鬼火ちゃん、ライダーの四人は身を寄せ合ってパソコンの液晶画面を覗きこんでいた。
「これだよ、炉黒君」
蜻蛉さんがキーボードを慣れた手つきで乱れ打ちし、一つの画面が浮かび上がった。それはパソコン好きの人間ならばだれでも利用したことがあろう、掲示板サイトだった。
蜻蛉さんは、神隠しだよ、と不敵に微笑みながら僕に告げた後、面白い物を見つけたからと、鬼火ちゃんとライダーも含め自宅に招き入れたのだ。
「あー、蜻蛉さん。これ私も楽しかったやつでしょー?」
液晶画面に映し出されたサイトを見て、鬼火ちゃんが目を輝かせた。
鬼火ちゃんも楽しいとはどういったサイトなのだろうか。でも、基本的に鬼火ちゃんはちょっとしたことで楽しんでしまう傾向がある。好奇心旺盛な鬼の子なのだ。
というよりも、この一部屋で鬼火ちゃんと過ごしているのかと考えると犯罪の匂いがしてならないな。これからはライダーが一緒に住む訳だから、良く見張っておくように言いつけておかないとダメかもしれない。
「鬼火ちゃんは浴槽で寝るのが好きみたいだから安心してよ、炉黒君」
はたまた表情に出ていたのか、それとも読心術を使用したのかは定かではないが、蜻蛉さんは僕が考えていたことに対して的確な答えを返してきた。
「でもそれじゃ、浴槽に少女を監禁する犯罪者みたい」
絵的に想像してみるとなんとも危ない気がするが、それはあくまで絵的になので離れて寝ているのなら一安心だ。
ライダーは間を取ってダイニングに寝せることにしよう、そうしよう。
「炉黒君これだよ、読んでみてくれ」
蜻蛉さんが液晶画面を指差しながら言った。そこには。