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ミムロ コトナリ
ミムロ コトナリ
novelistID. 12426
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マジェスティック・ガール.#1(9~14節まで)

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一年前のシャトル爆弾テロ事件で犯人の脅しで破棄する羽目になった。
両親に買ってもらったお気に入りだったのに、
捨てざるを得なくなったのは正直残念でならなかった。
 「うわぁ、本当にありがとうございます。また買おうかと思ってたんです」
ミミリは嬉しそうに、リボンで結い上げていた左右の
小さなツインテールに髪留めを付けた。
 「ふふ、喜んでもらえてなによりだわ。さて、私はこれで失礼するわー。
サンフラワー。あとは任せたわねー」
それを最後に、冶月フィラは”サンフラワーの中から”退出した。
 「はい、フィラ。では本題に入りましょう」
”サンフラワー”が言った。
「”ミミリさん”。<リミテッドテン>はご存知かしら」
 リミテッドテン。対アクトゥスゥ撃滅攻撃用スーツ
<アクエリアス>を身に纏う士官学生。この学園都市コロニー
<プランタリア>を守る<英雄>だ。
 「はい。『プランタリアで<アクエリアス>装着を許可された
限られた十人の士官学生』のことですよね」
「その通り。No.1からNo.10のうち、今現在No.10が欠番。不在なの」
「はい…。あれ?去年、学園案内を見たとき
No.9も欠番になっていませんでしたか」
ミミリは、去年発行されたパンフレットの内容を思い出した。
 「ああ」とサンフラワーが、そう言えばという表情を見せた。
「そこにいる、ツツジ・C・ロードデンドロンがひと月前に拝命したわ」
「はぁ。え、ええ…!?」
一回驚いて、ミミリはツツジの方を見た。

 「ほ…本当ですか、ツツジ」
「あー、言ってなかったっけ。そう、先月ね。任命を受けたのよ」
 プランタリアでは、前期三年、後期三年の六期。
計六年間の訓練履修期間が設けられている。
後期生ともなると、優秀な士官学生の中には教練の一環として
連邦軍へと出向し対アクトゥスゥ撃滅作戦に駆りだされる生徒もいる。
そうした学生を選出するために設けられた枠が、リミテッドテンであった。
 リミテッドテンは、学業優秀かつ成績優良の評価を修めた士官学生の
中から選出される。特例として、極稀に前期生から選出されることもある。
 その特例を受けたのが、自分の親友だと知ってミミリは目を皿のようにした。
「すごいです…ツツジ。流石、ジュニアスクールで、
努力家として三つとなりのクラスにまで
知れ渡っていたことだけはありますねぇ」
「…なによ、その微妙な知名度は」
 ジト目になるツツジ。
ミミリの評価が今ひとつなのも無理はない。
 ツツジは一つのことに特化した天才タイプではなく、
これといった尖った才能がない。
よくも悪くも普通。”異才と異常が常道”であるマジェスター達の
中にあって、彼女は至って”普通の異色な凡才”だった。
特殊な仕事を生業とするマジェスターにとって『普通』というのは
実に致命的だった。
 それを覆すために凡才な彼女は、まんべんなく努力と修練を地道に積み重ねて、
平均的に高い結果を出す秀才タイプの人間になろうとした。
結果、普通の凡才は秀才になり、非凡な天才達を追い抜くまでになった、
という訳だ。
 「続きをいいかしら。で、よ。ニ年以上、欠番だったNo.10を
再び選定しようと考えているの。さっきの理事会でも、
少し話題に触れてね」
 先ほど叔父ユリウスが、理事会会議に出掛けたことを思い出した。
その議論に、叔父も加わっていたのだろうか。
 「その候補に、ミミリ・N・フリージアさん。貴方も入っているの」
「はぁ、そうですか」
答えて一瞬、空白の間が出来た。
 「って、え。…ええッ!?私がですか」
「そう、貴方よ。と言っても候補の候補なんで、
そう身構えなくても大丈夫よ。
候補リストに名前が上がるのも、今度の七月上旬に
行われる前期期末査定の結果次第ね」
 「で…でも、でも。私一年も不在でしたし、
皆さんよりかなり遅れています。
もしかして、留年…ですか?」
 ミミリにとって、それはとても気にかかっていたことだった。
不在だった期間、どういう扱いになっていたのだろう。

 「プランタリアに留年制度はないわ。不在中は休学扱いに
しておいたから。それに、マジェスターは選ばれた優秀な遺伝子を
調整して造られた超人。先天的に須らく優秀なのよ。
寿命も短いしね。時間は無駄にできないわ。
貴方の一年の遅れは放課後に補修を実施することで補います」
サンフラワーはきっぱり整然と答えた。
 「そ…そうなんですか。分かりました」
それを聞いて、ミミリはほっとした。年齢的には前期二年生に
なるというのに、一年のままでは正直居づらいし格好悪い。
学園のシステムに感謝する所だった。
 ツツジが横合いから、ミミリの背中を叩いてウィンクした。
「へぇ、やったじゃないミミリ。憧れのマジェスターの使命を
全う出来る夢が叶うんじゃない?
お世話になった人達に恩を返すためにも、皆を守りたいってさ」
「えへへ。ありがとう、ツツジ。でも、まだ候補の候補ですよ。
まだ道のりは遠いです」
そういうミミリは、はにかみ笑いを隠して、
少し照れくさそうな仕草を見せた。
 「ううん。エントリーにあがるだけでも大したもんよ。
アンタ、入学して二週間後くらいにやった
能力技能測定、個人技だけは郡を抜いてたもんね。
集団は、まぁアレだけど」
「あはは…。それは言わないで下さいよぉー」
 ミミリは、マジェスター単体としての能力はアベレージより平均以上。
天然な所はさておき機転もきき、よく頭も回る。
メンタルも強い。
苦労人で、逆境に負けない強かさと豊富な知識に裏打ちされた
聡明さも兼ね備えている。
 ところが、不運と不幸を呼び寄せる体質であるが故、
グループでの集団行動となると
思わぬ相互作用により、自分はおろか周囲をトラブルに巻き込んでしまう。
それ故に集団連携査定の成績は下から数えたほうが早い方だった。

 <展望台>のデスクに備えられた室内電話が鳴った。
サンフラワーは子機を取り、電話に出た。
「ええ。…はい。…はい。…わかりました。了解致しました」
実に手短に用件を聞き終えた彼女は着信スイッチをオフにし、子機を置いた。
 ミミリが見たサンフラワーの横顔は、どこか深刻で鎮痛な面持ちだった。
 「いかがしましたか、サンフラワー」
栞が厳かに訊ねた。
 サンフラワーは、一回眼瞼をとじ一泊置いてから口を開いた。
 「GUC政府からの要請よ」
 「へっ、とうとうお出ましか」
やっぱりか、という風にヒューケインは電話の
用件をいち早く察したようだった。
その予見は、サンフラワーが発した次の一言で確信となった。
 「アルマーク星系郊外にアクトゥスゥ変異体郡が侵入したわ」
それを聞いて、凛とツツジの眼の色が変わった。
事態に対し即座にスイッチを切り替えることを知る、
プロフェッショナルの目付きになっていた。
ミミリは、180度様変わりした空気に固唾を飲んだ。
 部屋の中央に、バーチャルディスプレイが表示された。
目に貼ったARツールにより即座に補足情報が視覚化され、
状況を示すCGインフォーメーションが図面展開された。
 「目標郡は、光速度の13.38%の速度で航行。