迷宮神話
リサイクル・スター
深い緑色の眼をした少年が、星の欠片を握り締めている。少年の前には、彼と同じ色の眼を持つ少女が立っている。二人は、爪先で器用にバランスをとりながら、色とりどりのガラス球の上を滑るように移動している最中だった。
少女は立ち止まり、ふと一つのガラス球に眼を向けた。そして、ひょいと指先でそれをつまみ上げ、遠くに見える白い星の光に透かしてみた。
「これは、もうダメね」
少女が呟くと、少年は首をかしげた。
「もう死んでしまったの?」
「似たようなもの」
少年はそれを聞いて、持っている星の欠片を、ぎゅっと強く抱きしめる。少女はガラス球をつまむ指先に力を入れ、ぱりんとそれを割った。砕けたガラス球の破片は、少年が持っている星の欠片と同じように細かくなり、きらきらと無重力に流れていった。
「こうやって、使えなくなった星は砕いて再利用するのよ」
少女はこともなげにそう言って、またガラス球の上を移動していく。少年は星の欠片が流れていった方角に眼を凝らしていたが、やがて少女の後を大人しくついていった。
あとには、もの言わぬ天の川だけが残された。