echo ~ たちの会話~
愛してるよ
愛してるわ
きみの言葉はまるでまやかしのようだけど、夢を見れるのなら、これくらいの甘さがぴったりなんだろうね
貴方の言葉はまるで手品みたいだけど、夢を見るのなら、これくらいの美しさがちょうどいいんでしょうね
ねぇ、きみが死んだら水の上にきみを浮かべてあげるよ
きみならきっと彼女よりも美しく哀れに眠れるだろうから
あらありがとう
それなら私は貴方が死んだら毒を飲んで貴方を追うわね
貴方ならきっと彼より劇的に寂しく眠っていると思うの
ああそれはいいね
それじゃあ、少し試してみないかい
どっちを?
もちろん、きみの死を、さ
嫌よ、私は貴方の死が見てみたいもの
そんな意地悪なことは言わないでおくれ、僕だってきみの死が見たいんだから
意地悪はどっち、私にこんなことを言うなんて
おや、自覚をしていないだなんてきみは意地悪な上になんて愚かしいんだろうね
そうね、そんなものより夢からの追放を自覚しているから、そのことだけでも十分だわ
物事に十分なんてないと思うよ
すでに溺れているのに、それ以上深みにはまってどうするのかしら
……
……
僕ときみの夢は、そろそろおしまいのようだね
そうね、私と貴方の夢は終わりみたいだわ
それならば、夢を見る前にひとつ、打ち明けとこうか
いいわよ、じゃあ同時にね
あのね、 は
を愛してるだなんて一度足りとも言ったことはない
なんだそんなことか
そんなの、とっくのとうに知っていたわ
水辺に咲くは、ナルキッソス
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シェイクスピアとギリシア神話から。
作品名:echo ~ たちの会話~ 作家名:肉野屋うさぎ