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むべやまかぜを 風雲エターナルラブ編4

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 そして。まとまりのない会社、イズムのない会社は早晩空中分解する。
 「倉田だっけ……社長。曲作ってんでしょ? そいつに、ああいう色違いの人間をまとめて引っ張っていくだけのカリスマってあんのかな?」
 「さあ……」
 大井弘子は言い、そこで、オフィスの扉が三度開いた。中から出てきたのはがりがりに痩せた若い女性。大変な美人というわけではない。なんというか、できそこないのホステスのように品の悪い人物。華やかは華やかなのだが、どこか無理をしたような田舎臭さが残る女性は早足で、これもまたどこかに去って行った。
 「所属の……アーティストって奴かね」
 「そうかもしれないわね」
 16CCにはプロダクション業務も行っているという。やはり、ヤクザな会社なのだ。まともな企業ではない。
 「いつまでもこうしているのもなんだし、暑いし……」
 「そうね。いきましょうか」
 姉妹は奇人観察に来たわけではない。仕事に来たのだ。
 「それにしても……本社呼ぶんだったら、作業入る前にすりゃいいのに」
 丸山花世は言い、姉は軽く頷いただけだった。そして、いよいよヤクザ物の巣窟に足を踏み入れる。
 ビル一階の自動ドアの向こうにはエレベーター。二階から上は別会社の事務所などが入っている。 ――生命保険の会社とか、器械とか、お堅いテナントばっかりだな。
 丸山花世はさりげなく一階表札を見ている。それは大井弘子も同じ。
 「自社ビルじゃないよね。家賃どれぐらいなんだろ?」
 「さて。結構な額でしょう……」
 大井弘子は曖昧に応じて、奥に向かう。ビルの一階奥。そこには表札がかかっている。
 ――16CC Record
 ――Kinder CC 
 二つ並んだネームブレート。
 堂々と並んでいるが、実はすでにキンダーCCという部門はなくなっている。今は『16CC Game』。
 プレートを作ってしまったはいいけれど、突然の社名変更。各種備品の変更にも金はかかるだろう。意地を張った結末が細かな金銭的な出血。見栄えもいたって悪い。
 「恥の上塗りね」
 珍しく大井弘子がぼそっと言った。罵声は妹の役回り。だが姉もまた辛らつなところがあるのだ。
 「同感だね」
 丸山花世は言い、そこで、扉脇にあるインターホンを手に取った。