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長い長い家路

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ただいま


YF-29のコクピット。
アルトは青い星がこれほど美しいものだったのか、と感動に浸っていた。
一度、バトルフロンティアに着艦しようとしたところで、エステファン大佐から通信が入る。
「マルーン2、新しい命令をつたえる。ミス・シェリル・ノームの元へ行き、口頭にてバトルフロンティア乗員を代表して礼を述べること」
言葉と当時に機載コンピュータにシェリルの現在位置と最寄りのランディングゾーンが表示される。
防疫医療センターだ。
「マルーン2、了解。これより…」
復唱しようとしてエステファン大佐に遮られた。
「復唱は不要。直ちに実行せよ。以上」
「了解っ」
アルトは可能な限り早くたどり着ける大気圏突入コースを割り出すと、スロットルを押しこんだ。
大出力のピンンポイントバリアに物を言わせ、強引に大気圏を駆け降りる。
ナビゲーションシステムの誘導で防疫医療センターの屋上にガウォーク形態で降り立つ。
EXギアを除装して機体から出ると、白衣の女性が迎えに来た。
「シェリルさん担当のアレクシーウ軍医大尉です。病室は、こっちよ」
病院の廊下で駆け出しそうになるのを必死でこらえ、カサンドラ・アレクシーウに従って特別病棟へ。
ガラスのカプセルに封入され保護液の中で浮かぶシェリルの姿を見出すと、アルトはシェリルの枕元に立ち、顔を寄せた。
保護液がゆっくり循環しているため、長いピンクブロンドが海藻のようにたゆたっている。右耳にはイヤリングが着けられていた。誰の配慮だろう?
「シェリル…」
かすれ声で呼びかけると、ガラスのカバーに掌を当てた。
わずかに温かい。
「数値は、いつ目覚めてもおかしくないんだけど…まだ眠り続けています」
カサンドラが説明してくれた。
「大丈夫」
アルトは断言した。
かがみこみ、ガラスに額を押しあてる。
「起きろよ、寝坊だぜ」
カサンドラは、シェリルの瞼がピクリと動くのを見た。息をのむ。
「まさか…」
体調を監視しているモニターの数値が、一斉に変動した。
保護液中でシェリルの瞼が開き、夢見るような青い瞳がアルトの琥珀色の瞳を見上げた。
透明なマスクで覆われた唇が、ゆるゆると動く。
「あ・る・と」
マイクが拾った音声が、スピーカーからこぼれ出す。
「保護液、緊急排水…カプセル開けます!」
カサンドラの指示で医療カプセルが開く。
海から上がったばかりの人魚姫のように、生まれたままの姿で濡れそぼったシェリルを、アルトの腕が抱き上げた。
唇を合わせる。
「ふふ…」
長いキスの後、アルトが唇を離すと、シェリルは夢見心地で囁いた。
「100億光年のキス、ね…」
作品名:長い長い家路 作家名:extramf