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灰かぶり王子~男女逆転シンデレラブストーリー~

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プロローグ


 此処はペテロアーヌ王国の下級貴族の暮らす平和な町、アリアス。
 吸い込まれそうな青空の元、小さな屋敷の庭で一人の古いドレスを着た、パーマがかった綺麗な金髪の“少年”が、洗濯物を干していた。彼の名前はシンデレラという。
 そう、あのシンデレラである。彼にはかの童話の少女と同じように、継母と二人の義姉がいる。そして同じく、三人にこき使われていた。
 彼がかの童話の少女と違うのは、性別だけではない。彼は王家の血筋であった。王家といっても、この国の、ペテロアーヌ王家の血筋ではない。
 今は出稼ぎに出ている父とアールイは、今では地図に載ることのない、ミッディール王国という亡国の王家の直系であった。
 アールイは、シャイン大陸の5大王国――今では4大王国だが――の一つで、とても平和な国の王家の生き残りだった。
 ほんの8年前まで、アールイは王子だった。
 彼の父は王と呼ばれ、国が滅んだことを気に病み、そのままこの世を去った母は妃と呼ばれていた。
 ミッディール王国が滅んだ原因は、その隣国リリアン王国にあった。
 ミッディール王国の隣に位置するリリアン王国は、面積も人口も生産量もミッディール王国がかなうことはなかった。リリアン王国の上級貴族の世帯数だけで、ミッディール王国の人口を上回った。
 そんなリリアン王国には、大国だからこその唯一の問題点があった。
 それは経済格差である。
 支配階級である上級貴族は多いが、被支配階級である農民や漁民はその数を大いに上回る。
 その代わりミッディール王国の経済格差はほぼ皆無といってよかった。
 皆が平等に財を分け会う社会が成立していた。
 支配階級は自分の管理する被支配階級が財を無くせば財を分け与え、被支配階級同士、支配階級同士でも同じことがいえた。
 王家が金を湯水のように使うこともなく、王は自ら貧しい民に財を与えた。
 しかしリリアン王国の王家はその真逆で、金を湯水のように使い、財政が困難になると多額の課税を国民に強いた。
 リリアン王国の最下層の被支配階級たちのその怒りは、リリアン王家ではなく皆が平等で平和な隣国へと向けられた。
 計画は着々と進んでいた。ミッディール王国の王家も国民も、誰もその計画に気が付くことはなかった。