マトリョシカ
2
「いらっしゃいませ。御注文はお決まりでしょうか?」
駅前にあるチェーン店のコーヒーショップ。レジで、キャラメルマキアートを頼み、コンセント近くの席を陣取る。
ショルダーバックから取り出したパソコンを立ち上げる。テキストファイルを立ち上げる前に、インターネットに接続し、メールをチェックすると、二通届いている。
一件目は、いつだか登録したらしいゲームサイトからの更新のお知らせ。興味がないので、読まずに削除。二件目は、監督からのメールで、タイトルは『脚本まだ?』。直ぐに、返信する。本文は、『うん、まだ』。送信。
「一人芝居殺人事件……」
アリ、かな。意外は犯人が、探偵とかの一人二役。一人芝居だから当然っちゃ、当然か。
メタミステリにもなりそうだな。
勢いのまま書き上げた処女作は、「つまらない」の一言で一蹴された。
リテイク。そして、今に至る。
目頭を軽く揉む。演出は、向こうに任せるとしてシナリオはどうするか。古畑みたいに、先に犯人側を書いてから、探偵側へスポットをあてるか。それとも、事件は進行中で、探偵役と、犯人役を交互に書くか。
ギミックが決まらないと、書けない。しかたない、さっきの案を使うか。一旦決まってしまえば、設定はすぐに決まった。
場所 大学
人物 学生A Bのゼミ生
教授B 大学教授
そして、ト書きで書き始める。