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夢と現の境にて◆参

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―――陸,脅威なる夢




―――たす――け、て…

か細い、…少女の様な声が聞こえる。
しかし周りは薄暗く、様子がよく分からない。コンクリートらしきもので固められてできた建物だということは、罅割れ汚れた壁を沿って視点が移動していたため、なんとなく察した。こうくるとただの夢である確率が少ないと既に本能的に悟っており、この先の展開に恐怖が増す。少女らしき者の、恐怖に震え啜り泣く声が徐々に近づいてきた。視点が床の下側へと切り替わり、そう思えば白く細い棒のような…、いいや、足だ。視点はその足の持ち主を映し出す。やはり、少女だ。十代の半ばと思われる髪の長い少女の姿。先程から泣いていたと見られるその少女はぐったりと頭を垂れていた。それだけでなく、腕は縄か何かで縛られ、その縄は壁に括られ少女は貼り付けられていた。真っ白のワンピースを着ており、まだ何にも汚れてはいなかった。…こんな表現を考える自分に、恐怖に見舞われながらも笑ってしまう。しかし知っているのだ。自分は。

カツンカツン――と突然靴の音が夢だというのに鮮明に聞こえてきた。これは、死の音だ。死を運んでくる音。もうすぐ、もうすぐこの少女はこの足音を立てて近づく者によって殺される。あの真っ白のワンピースを真っ赤に染めて、死んでしまうのだ。先回りをしてこう考えた方が自分の理性を保っていられる。先の展開を読めば読むほど何かどこかで安心できる。そして冷静にこの殺人や事件などの問題に立ち向かえる。これは大切な自分の使命なのだから。自分が狂ってなどいられはしない。

足音が止まる。後ろ姿で顔は窺えないが、長身の細身の男がその少女の前に立ちはだかった。その時に視点がまた移動し、男の右手に持つものをありありと見せるかのように俺の視界へと映した。
それは―――

…本当に、夢だというのに、自分は目を見開く程唖然とし、驚いた。そして逃げ出したい恐怖に駆られ、もしかしたらという考えに必死に抵抗した。そしてやめてくれと、冗談だろうと、現実逃避だろうか、いやこれは現実ではないのだが現実に至ってしまうのだ。ああ、もう訳が分からない。もう、いいから、お願いだからやめて。やめてやめてやめてやめてお願いお願いおねがい!!それを下して!!覚めろ!!悪夢になれ!!現実にしないで!!いやだあああああああああみたくないいい!!

そう俺が夢の中で無我夢中に叫ぶ中、男は手にするそれ―――チェーンソーを愉快に音立て動かすと少女の前でブンブンと振り回し反応を楽しむかのように笑ったかの様に思われた。その間少女は小さな悲鳴を上げ涙を零し小さな目をぎゅっと瞑り助けて助けて…と何度も口にした。その懇願の声にも男は嬉しくて堪らないとでもいう風にチェーンソーを少女の身体ギリギリにまで近づけて切るぞ、切るぞと脅すかのように笑って、楽しんで…
そしてついに、少女が声が出ないまでの恐怖に晒されたとき、恐れていた事態が始まってしまった。

チェーンソーの音がけたたましく機械音を轟かせた。その音で消し去られるはずの、少女の叫び声さえも耳に酷く辛く当たる。何かを確かに切る音。ウォンウォンとエンジン音がコンクリートの部屋に振動しガリガリと何かを砕く音がする。ピシャリと何かが飛んできた。血。真っ赤な鮮血。それと共になにか個体も飛んでくる。肉片。真っ赤に染まり切られ身体から剥がされた彼女の肉。今度はカランッと軽い音。何かと思えば白い棒。彼女の身体を形成していたはずの骨。今は無残にも赤く汁を滴らせながらコンクリートの床を赤く染めていく。だけど、いつまで経っても恐怖の音は止まない。足から切り始め少しずつ少女の身体を削る男は、彼女が気を失わないよう何度か頬を叩き、起こし、反応があればまた続行する。右足の次は左足。右足はもう既にこなごなに分解され、床に赤く散りばめられていた。終わらない、終わらない。どこまで続けるつもりなの、いつになったら解放してくれるの。まるで少女の気持ちのように終わらぬ惨劇の幕を待ちわびている。もう十分なのだ。もう、耐えられないのだ。いっそ、一息に絶ってくれたらと―――

右足同様、左足を満足そうに分解した男はすでに少女がショックか、それとも大量出血のためかで命を落としていたことに気づく。残念そうに溜息をつく姿に腸が煮えくり返りそうだったが気持ち悪さの方が今の自分を占めていた。

もう少女は死んでしまったのだからこれで終わるはずだ。そう思った。だけど、ここからが自分の理性を崩壊するショーの始まりだったのだ。男は、一度止めたはずのチェーンソーを再度唸らせた。何を、するつもりなんだ。そんなこと聞けるはずもなく叫べるはずもなく。男は死んだ下半身の無い少女の腹を丁寧にそれで切ると腹を開き突然腹に手を突っ込んだ。そう思えば何かを引き抜き引っ張りだす。一目で、それが何か分かった俺は身体から込み上げる恐怖なのか悍ましさなのか分からぬ感覚に何かを吐き出してしまいたい程の衝動に襲われた。気持ちが悪い、もうこんなの見たくない。終わらせて、もう俺を解放して。お願い…っお願いだからあ…っ
力一杯に男が引っ張り出していた内臓の一部である小腸だろう、それを漸く身体から千切り出すと、まるで縄でも振り回すかの如く血を飛ばし赤ん坊のようにそこら辺へと放り投げた。自分の視界がその飛んできた血によって赤く染まった。その時、自分の頭の中が真っ白に染まった気がした。ただ、もうこの場の状況を思考によって読み取ることなどできなくなってしまった。どこかから言葉にもならない金切り声が聞こえた。耳を劈き、これ以上の情報を得まいと必死の抵抗をする。だけど視界は声では途切れない。終わらない。そして俺の抵抗も虚しく、最後まで無残で殺戮なショーを、俺は何も考えられなくなるまで見せられ続けた。そして最初に見た白いワンピース姿の少女は、最終的に、唯の赤い肉片の塊へと変わり果ててしまった。

作品名:夢と現の境にて◆参 作家名:織嗚八束