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ひどいおともだち

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放課後のある日、僕と僕の大親友・夏野由希くん17歳メガネっ子は掃除当番だった。
 僕にジャンケンで負けて、バケツに水を汲んで来た夏野を見て、ふと思いついたんだ。
 ―――後から思えばさあ、『魔が差した』っていうやつ?だったよ。
 夏野はさ、あんなに気にかけて大事にしてるくせに、弟くんのことになるとやたらクールに振舞うんだ。それが馬鹿みたいで、とても面白くて、僕はからかってやろうと思った。
「夏野~」
「ん?」
 バケツを床に下ろして、夏野は気のない返事をする。僕は携帯を弄って、適当な女の子からのメールを開いた。【こないだの送るね♪】っていう件名の、僕と女の子のプリクラが添付された写メ。えーとこの子誰だっけ。あっそうだ確か女子高で一匹狼やるの疲れたもう群れたいとか言ってた子だ。
「ほらこれ」
「なんだ、現在のお前の被害者かよ。早く解放してやれ」
 見せると夏野はめんどくさそうに携帯を閉じた。被害者なんてひどいなあ。この子こんなに楽しそうで喜んでるのに。まあもう飽きたから会わないだろうけど。あんまり面白い関係性は持ってなかったんだよねぇ。
「ひどいなあ、彼女って言ってよ」
 あ、でもつまり夏野の言ったとおり『解放してあげた』んだから僕は良いことをしたんじゃないかな!
 どうでもいいけどね。
「でさ、」
 これからの夏野の反応を期待して僕は微笑む。夏野が小声で「にやにやすんなキメエ」とか言ってるけど気にしない。一応、僕は巷ではイケメンってことになってるんだからキモいじゃなくて蓮見カッコいい!が正解だよ夏野。
「弟くんに言っといてよ」
 携帯をポケットに戻し、僕は本題を告げる。
 この毒舌な友人がどんな反応を返すのか、僕は楽しみで楽しみで―――たまらなかった。

「君の元カノは元気です、ってさ」

 夏野の表情がぴた、と停止する。
 さすがに怒っただろうか。
 まあでも夏野のことだから、内心怒ってるんだろうけどクールな振りして流すんだろうなあ。それか弟くんを慰めることでも考えているのかな。
 ああ夏野は本当に『弟想い』みたいだなあ。優しいなあ。馬鹿だなあ。
 そういう『関係性』ほど―――掻き回してやりたくなるんだ。
 停滞なんて面白くない。ぐちゃぐちゃに、めちゃくちゃに、しっちゃかめっちゃかにして―――決着させるのが、楽しいんだ。
 さて、夏野はどんな顔をしてるかな。楽しみだ―――……ッ!?

(………え?)

「……ッ、がッ!?ごふ……ッ!?」
 やばい、水飲んだ。
 水?
 えっなんで!?
 くるし……
 ????????
 わけもわからずぼくはばたばたとてあしをめちゃくちゃにうごかす。
(夏野の手が僕の頭を後ろから掴んで、それで、)
 ここどこ?
「……ッ!?………!!」
 やばい、
 いきできな、

「………ッ、蓮見!」
 夏野の声がぼやけて響いて、僕はやっと空気の中に戻れた。
 うわ、雑巾臭い。
 すん、と鼻を鳴らすと、さっきまで自分が突っ込まれていたのが掃除用のバケツだと気づいた。
「……悪ぃ」
 夏野はハンカチを取り出して、生理的に浮かんだ涙とか鼻水とか水道水(雑巾入れる前で本当によかった)とかを拭う。僕はぼうっとソレを見ている。頭の中は真っ白でなんだかよくわからない。全体的によくわからないというか理解できないというか?????
 僕はそのまま、赤ちゃんみたいにされるがままになって、ぼうっとしてた。
 あ、そうだ。
「うそだよ」
「あ?」
「さっきの、うそ」
 種明かしをすると、夏野はあからさまにホッとした顔になって「なんだよ馬鹿、びっくりしたじゃねーか」とハンカチで僕の額をぺしりと叩いた。びっくりしたのはこっちだよ馬鹿。
「あはは」
 僕は無意味に笑ってみる。いわゆる空笑いだ。いやもう笑うしかないというかなんというかいやはや。
「夏野、怒ると超怖いね☆」
「だから悪ぃって!つかお前意味わからん嘘つくなよ」
 いつものようにふざけてみると、夏野もいつものように僕を貶しつつ許すような友人の顔に戻った。それを見て、僕は安心する。
 ああ、よかった。
 危うく僕と夏野の『関係性』が変質するところだった。
(……とりあえず)
 夏野を本気で怒らせるのは、金輪際、絶対に止めよう。
 僕はそう心に誓ったのだった。


「あー夏野はなんてひどいお友達なんだろうっ!」
「外道のお前に言われたくねーよ」
作品名:ひどいおともだち 作家名:白架