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Juno は きっと微笑んだ

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順調なすべりだし


教会の正門から叔父の後について中に入ると、日曜のミサが聖堂では行われているようで、神父さんの声が少しもれていた。
建物の角を曲がると、隼人さんも麗華さんも、新しくなったお墓の柵のかわいい入り口の前に立って作業をしているようだった。
「隼人さーん、遅くなりましたー おはようございますー」
離れたところから後姿に声をかけていた。
「おー 悪いなぁー バイト休めたかぁー」
「無理やり言ってですけど・・社長もここにいるからいいんじゃないかなぁー」
隣の叔父を見ながらだった。バイト先の不動産屋は、叔父が社長をしている建設会社の子会社だったし、子会社にはほとんど来なかったけど、そこも叔父が社長をしていた。
「えっ」
隼人さんは、ちょっと、わからないって声を出していた。
「あっ、こんにちわ、この前はどうも・・」
隼人さんが、叔父に頭を下げていた。
「今日は、手伝わせてもらいますから・・」
「すいません、いいんですか、助かります」
「早く 終わらせて、お花見しましょう・・いい天気だし」
叔父が隼人さんに近付いて、挨拶を交わしていた。
「えっと、隼人さん、知ってるみたいだけど、俺の叔父さんで、隣の家の人ですから・・それから、バイト先の社長もですから・・」
「このまえ、話を少しさせてもらったから・・そうかぁ あそこの社長さんですか・・」
隼人さんは、さっきの話が読めたみたいだった。
「あそこは本業じゃないんだけどね・・本社は新宿だから・・」
叔父がこたえていた。
「そうなんですか・・いいんですか、せっかくの日曜なのに手伝ってもらっても・・」
「おもしろそうだから、邪魔かもしれないけど、手伝わせてもらうわ・・」
叔父がさっき ポケットに入れたタオルを頭に巻きだしてだった。
「お嬢さんも、今日も頑張ってるんだね、よろしくね・・」
「はぃ、こちらこそ、劉の叔父さんなんですよね・・」
隼人さんの隣で話を聞いていた麗華さんが笑顔で叔父にだった。
「田舎の兄の2番目だから、こいつは・・」
頭を叩かれていた。
「さっ じゃぁ、劉ちゃんと俺はなにをすればいいかな・・」
「えっと、じゃぁ、 この色で柵をずーっと塗っちゃってもらっていいですか・・僕達は2人でこの入り口を片付けちゃいますから・・」
薄い桜の花のようなピンクの色のペンキだった。
「ほぉー これかぁー かわいい 色だな・・」
「ちょっと、どうかなぁーって思ったんですけど、芝生に映えるかなぁーって思いまして」
「いや、いい色だよ、俺は好きだなぁー」
叔父が笑顔でだった。
「そうですか、ほっとしました、ではお願いします、わからないところあったら聞いてください」
「よし、じゃぁ 始めますかぁ・・」
叔父に言われて、あわてて、ペンキを塗るローラーを2つ取って、1つを叔父に渡していた。
「お願いします」
隼人さんが丁寧に叔父に頭を下げていた。
「あっ 麗華さん、直美も一緒に来てるんだけど、お花見の宴会のの準備で叔母さんと買い物に行くらしいですから・・よろしくって言ってました」
「はーい、わかったわぁー」
麗華さんは柵の入り口に小さくついた飾りの花の色を染めながら元気な返事だった。

「おっ 俺もなかなかうまいけどー お前もけっこう うまいなぁー」
叔父が後ろから覗き込んでいた。
「終わっちゃったんですか・・もう・・」
「いや、偵察だろうが・・お前がヘタじゃ恥ずかしいからな・・」
「叔父さんこそ、大丈夫なんですか・・きれいに塗れてるんですか」
「俺は、こういうのけっこう うまいんだって・・」
「本当ですかぁー 後でみますよー こっちはもうすぐ終わっちゃいますから」
横の柵の1面がもう終わりそうだった。
薄いピンクの色の柵が芝生に映えてきれいだった。われながらきれいに仕上がっていた。
「これだったら、お昼には終わっちゃうんじゃないかぁー 」
「叔父さんの方はどうなんですか、もう終わりそうなんですか、そっち終わっても、もう1面まるまるやらなきゃいけないんですからね・・隼人さんたちは、飾りの細かいところ塗ってるんですから・・」
「わかってるって・・だけど、足が痛くなっちゃうんだよ・・姿勢がなぁー」
「歳ですね、きっと・・」
「バカ言ってるんじゃないって・・」
大きな声で背中を叩かれていた。
「さて、10時だから、お茶にするか・・」
「なんだ、休憩したいだけなんだ、叔父さん」
「けっこう 言うねー さっ、家に帰ってお茶しよう」
「はい、そうしますか・・」
「先に俺は行ってるぞ、早くこいよ」
「はぃ」
叔父は庭続きの入り口から、自分の家にさっさと歩き出していた。
「隼人さん、お茶にしませんかって・・叔父は先に行っちゃったんですけど・・」
「おっ そんな時間だな・・どうだ、こんな感じで・・」
飾りの花や蔦がかわいい色できれいに塗られていた。
「かわいいですねー きれいです」
「いいでしょ、かわいくしすぎかなぁー」
脚立に乗って入り口アーチの高いところを塗っていた麗華さんに言われていた。
「いや、なんか、教会らしくっていいですよ」
「そう・・なら いいんだけど・・」
「麗華さんもお茶にしましょう、叔母が待ってますから・・」
「そうね」
脚立から降りて手に持った筆とペンキを片付けながらだった。
「劉は順調に進んでるのかぁー」
隼人さんが俺が塗っていたほうの柵に近付きながらだった。
「おっ きれいにできてるなぁー もうすぐ終わりそうだなぁー」
「ここは、お昼前に終わっちゃうと思います、叔父のほうは見てないんですけど・・どうかなぁー 足が痛くってとか文句言ってたし・・」
「どれ、見て見ますか・・」
隼人さんに続いて麗華さんといっしょに叔父が作業をしていたほうに進んでいた。
「おっー 終わってるぞー」
「ほんとだ・・びっくり」
きれいに仕上がった柵を見て3人でちょっと驚いていた。
「叔父さん、終わったなんて、なんにも言ってなかったんですけどね」
「器用なんだな、けっこう・・」
細かいところを覗き込んで見ながらの隼人さんに言われていた。
「見かけはそんな風にみえないですけどね・・」
「そうかぁー そうでもないだろ・・」
「そうですかぁー 声でかいし、細かい事嫌いそうだけど・・」
「いや、細かなところもきれいになってるわ・・」
「たしかに・・・」
ちょっと感心していた。
「では、遅いと怒られるから行きましょうか・・庭からいけますから、こっちですから・・」
叔父の家の庭と続いていた小さなドアに向かっていた。
歩きながら後ろを振り返るといくつかの十字架のお墓の周りには、入り口にアーチが付いたかわいい色に染まった柵がきれいに出来上がりつつあった。一緒に、作業着に少しずつペンキがとんだ作業着姿の隼人さんと麗華さんだった。知らない人が見れば若いペンキ職人そのもので、その後ろの大聖堂からは、賛美歌のオルガンが響いていた。