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Juno は きっと微笑んだ

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ぶらっと、教会に


直美と教会に来てから、2週間が過ぎていた。
3月に入って、学生さんの引越しが多くて、シオンコーポレーションは日曜も大忙しだった。豪徳寺のワンルームの賃貸マンションをご案内してお客様と別れたところだった。部屋は気に入ってくれたみたいだったけど、他の不動産屋さんものぞいてみるらしかった。
普段は下北沢の物件以外は、俺以外の正社員が車で案内だったけど、みんな手が離せなくってめずらしく俺がだった。
時計を見ると12時半になっていたから、食事して帰りますって、会社に電話をして、気になっていた隼人さんの柵作りを見に行くことにした、ここから歩いて、10分かからないはずだった。

「隼人さーん」
電動ノコギリの音が響いていたから、大きな声を出していた。
「隼人さん」
聞こえないみたいで返事が無かったから近付いて目の前でもう1度だった。
「おっー なんだ、休みか、バイト・・」
「いえ、バイト中なんですけど、物件案内で近くまで来たんで・・」
「そうかぁ」
電動ノコギリを芝生の上の置きながらだった。
「お昼食べたんですか、もう・・」
「さっき、麗華と一緒に」
「麗華さんも手伝ってるんですかぁ」
ちょっとビックリしていた。
「1人だとちょっと出来ないこともあるからな、喜んでけっこうやってるわ、麗華も・・・今、お昼に教会から出してもらった、お茶の器を返しにいってるから、すぐに戻ってくるだろ」
「そうですかぁ・・あっ、この前ここの完成図の絵を見せてもらいましたけど、いいんですかぁ、大掛かりになっちゃったけど・・」
「あの日に帰りながら車の中で考えたんだけどさ、全部1人でなんか作ったことなんかないしさ、それに、ここなら、きちんと作れば10年以上はきっと、大事にここにあるのかなぁーって考えたら面白そうだったから、それに麗華も完成図見せたら、かわいいって言って手伝うっていってくれたからな」
「かわいかったですよ、直美も言ってましたよ」
「そうかぁー 良かったわ」
うれしそうに、隼人さんは顔をゆがめていた。
「あれ、劉来てたんだ・・」
後ろから麗華さんの声だった。
振り返ると、青いつなぎの作業着で軍手まではめてマフラー代わりなのかピンクのタオルを首にまいた姿だった。お金持ちのお嬢さんだったから、そんな格好を見るのは初めてで、ちょっとビックリだった。
「どう、似合ってるかなぁー」
「なんか、別人みたいですけど・・」
「そう、けっこう気にいってるんだけど」
うれしそうに笑って、かわいい麗子さんだった。
「怪我とかしないでくださいね、麗華さん」
「うん、それは隼人がうるさいからさぁ、安全に無理しないでやってるから・・でも、けっこう面白いのよー」
「なら、良いですけど、無理しないでくださいね」
少しづつ出来上がっていた柵を眺めながら口にしていた。
「隼人さん、なんか言ってましたか、ステファンさん・・」
「うーん、お願いはしたんだけどなぁー なんか話がいっつも違うほういっちゃうからさぁー 」
まだ、やってるのかって思っていた。
「そうですかぁー いいんですか、早めにはっきりしないと困りませんか・・」
結婚式の日まで、もう2ヶ月ちょっとになっていた。
「もし、ここでお式挙げられなくても、ホテルのチャペルなら少し前に言えばなんとかなりそうだから、いいのよ、劉・・」
麗華さんが、けっこう元気な声で答えていた。
「でも麗華さん、そんな格好までして出来なくてもいいんですかぁ・・俺は責任持てないですからね・・」
「いいからいいから、なんか、隼人が描いたあの絵みたいに、ここにかわいい木の柵できあがったら楽しいから、それとこれは別なのよ」
「そうそう・・逆になんか、こんなの自由にやらせてもらって、俺らけっこう楽しんでるから・・」
隼人さんと麗華さんが顔を見合わせて俺にだった。
なんだか、ほっとして、笑顔を2人に俺は見せていた。
「すいません、なんだか、全然俺って力になれてなくて・・」
「気にすんなよ、もともと 俺らの問題だからさぁ・・逆に劉を巻き込んでるんだから・・」
「そんな事ないですよ、頼まれたのになーんにも出来なくてです」
「いいから、いいから・・さっ 麗華それ持ってくれるか・・暗くならないうちに頑張らないと・・」
「隼人、これだよね・・」
隼人さんの声で、麗華さんが加工された木材をもって、名前はわからなかったけど電動工具をもった隼人さんが近付いてネジを打ち込むようだった。
「じゃぁ、悪いんですけど仕事中なんで、そろそろ帰ります」
「そうかぁー また、見にきてくれよ、なかなか完成はしないけどな、週に1回しかこれないから・・」
「はぃ、またきます」
「うん、劉、またね」
麗華さんも一緒に声をかけてくれていた。もともとお嬢様のくせに元気な人だったけど、今日は特にだった。
「あれ、叔母さん、キャンドルなんか置いたんだ・・」
従兄弟の詩音の十字の墓の前に赤いキャンドルが昼間から焚かれていた。
「あっ ごめん、それ置いたのわたしなの・・うるさい音だしてるから、ごめんねって・・いい香りでしょ、桃の香りなのよ・・」
キャンドルを横目で見ながらの麗華さんだった。
「そうですかぁ・・ありがとうございます。桃の香りが好きだったかどうかは忘れちゃったけど、喜んでると思いますよ」
「だったらいいけど・・なんだか、工具ってすごい音とかでるんだもん、びっくりしちゃった、わたし・・おとなりの家とかにも悪くって挨拶しに行っちゃった」
隣の叔父の家を指さしていた。
「きれいな洋館だよねぇー」
「古いですけど、中もけっこういいですよ、雰囲気あって・・叔父の家なんですけどね、そこ」
「えっ・・この前言ってた隣が親戚ってそこなんだ・・叔母さんって言ったのもそこなの・・」
「そうですよ」
「じゃぁ、このお墓は従兄弟って言ったから、おかーさんって事・・」
「そうですね・・」
「そうかー 知らなかったぁ・・」
隼人さんが、また電動ノコギリを動かしていたから、俺も麗華さんも大声でだった。
「あいさつに、この前行ったけど、とってもいい人だった・・そうかぁー、そうなんだぁー 劉ちゃんの叔母さんかあー・・」
「そう、この教会の土地も、もとは隣の先祖の土地だから・・それでお墓がここにあるんですよ」
「へー びっくり・・」
「あっ、帰らなきゃ・・じゃぁ、帰ります麗華さん」
「うん、ありがとね、たまに見にきてよ・・日曜はいるから」
「はぃ」
麗華さんに頭を下げて、詩音のお墓には、にぎやかでいいじゃんって声をかけていた。
力強く電動ノコギリを握った隼人さんにも大きな声で挨拶をして教会の出口に向かっていた。
少し歩いてから振り返って2人を見ると楽しそうで、ちょっとうらやましかった。やっぱり お似合いの2人だった。