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あなたが全部わたしのものにならないなら。わたしなにもいらない

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「どうだった?こんどの人は」

時子が私に聞く。
「優しそうでいい人だったよ」
私がそう答えると時子はよかった、と言ってふわりと笑う。

幼なじみの時子は男の子が苦手な私を心配して、なにかにつけて男の子を紹介す
る。



私、彼氏なんて欲しくないよ。

だけど時子が私を心配してくれることが嬉しくてそのことは黙っている。

「さおりは可愛いからすぐにいい人見つかるよ」
時子は彼氏ができる=幸せになるという図式が全ての女の子の脳内にあると勘違
いしている節がある。
みんながみんな、そうじゃないんだよ。

「時子が男の子だったらよかったのに」
私がいつものようにそう呟くと時子は「私も沙織と付き合いたかった」と笑う。


時子。わたし時子じゃないと嫌だよ。

胸の奥が緩やかに締め上げられるのを感じながら黒のセーラー服に身を包んだ時
子に抱き着いた。