道の曲がり角【詩集1】
闇の底
暗い闇の底を見た
ありふれた日常の中にふと口を開けるクレバス
遥か上方には細長く切り取られたリボンの様な青空
何事もなかったかのように……
闇の底には音もなく光もなく手触りも臭いもなく
ただねっとりとした闇だけが周囲を囲む
包み込む優しさもなく
ただそこにあるだけ
ほんのさっきまでは
ありふれた日常生活の中にいたのではないか?
家族、学校、社会、人がいて、駅があり、店があり、街があり、国があり……そこに
は世界が存在していたのではないのか?
それすらもまぼろしだったのか……
誰にも届かない声
誰にも届かない叫び
どこにも届かない手を空へ向かって伸ばす
闇の底にただ一人いる
音もなく光もなく手触りも臭いもない
ただねっとりと沈む闇の底に
作品名:道の曲がり角【詩集1】 作家名:maki