道の曲がり角【詩集1】
砂の城
あなたは優しい
あの人と違って
あなたの手は優しく触れて
あなたの唇はそっと口づける
荒々しいあの人と違って
己が情熱のままに愛し、支配し、私を揺さぶったあの人と違って
あなたは優しく私に触れる
私の髪に、指に、唇に
そして優しい言葉で語りかける
燃え上がる情熱のあの日はもう戻らない
優しいあなたに惹かれていく
私の心は本当はどこにある?
私の心はもうあの人に捧げ尽くしてすべて燃え尽き、枯れ果ててしまったのではなかったか
あなたは優しい
その優しさで、私の心を捧げたかの神殿は
はかなくも風に舞う砂のように崩れ、消え去ろうとしている
燃え盛る炎に焼かれた白い灰でできた砂の城
あなたの優しさが暖かな雨の滴となって
乾いた砂漠を濡らす
私の命を、魂を、愛をすべて捧げたはずの神殿は目の前で霞んで消えていく
手を伸ばしても掴めないそれは寂しい心が生んだ幻だったのだろうか
今となっては確かめる術もない
指の間からさらさらとこぼれ落ちていく
作品名:道の曲がり角【詩集1】 作家名:maki