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氷解き

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氷解き《こおりとき》


 おお、その声は草太だね。外は寒かったろう、よく来たね。どれ、今日もたくさん持って来てくれたねえ。白菜、大根、玉子、馬鈴薯・・・重かっただろう、こっちにお茶とお菓子が用意してある。さあさ、囲炉裏にあたりなさい。雪に濡れたままだは風邪をひいてしまう。

 それにしても最近は雪の量が減って来たねえ。昔はこんなものではなかったよ。真冬になると一面雪だらけさ。家が埋もれてしまわないようにと朝晩かまわず屋根から雪を降ろすのには苦労した。草太、おまえのばあさんの、絹が嫁いで来た日も大層雪が降っていたよ。
 
 その日は狐坂の方で雪崩が起きてね。通れなくなてしまったからと言い、すいぶんな遠回りをすることになったらしい
そんな知らせも届かなくてね。約束の時間を過ぎてもなかなか嫁がやって来ない、雪ばかりがどんどん積もってね、もう今日のところは来れぬだろうと思って寝てしまった。
すると夜更けに戸を叩く音がして、それこそ地蔵かなにかが来たのかしらん、と思いながら重たい戸を少しずつ開けると、そこには絹が立っていた。
少ない荷物と蓑がさを雪の上に降ろし、白い着物一着で戸口に佇んでいた。
雪の降る夜は闇が一層濃くなるからねえ、その白さといったら、眩しいばかりに輝いて見えた。
作品名:氷解き 作家名:にょす