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monochrome

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優越感に浸るのは好ましくない。
そもそも、私の感覚がずれてしまったのはいつからだったか。
もしかすれば、最初からそういう運命だったのかもしれない。

もっと評価されるべきだと猫が言った。猫だ。猫がしゃべった。もしかしたらそれは気のせいで、私が自分で言った言葉か、それまた天の声かもしれない。だがそれがどうしたのか。評価されるべきところなどないし、必要でないのだ。
私が作り出したかったのは「ヒト」だ。
都合良く動く「人形」ではない。
たとえそれが望まれたものでも、望んで生まれたものではない。
その違いはとても大きい。

美しいから良いのだと鴉が言った。けして美しくはない鴉が。そう、言った。最初はそれでもよかった。だが、次第にそうはいかなくなった。何より自分がそれを許さなかったからだ。人形の目には命はない。求められた完全しかそこにはない。私の美学にはそぐわない。
美しいからといって、「ヒト」にはなりえない。
むしろ、そうなるほどそれは遠ざかっていく。
---------なんと、恐ろしいことか。

最後だと山羊が言っていた。その目はおぞましい闇のようで、どこまでも普通で人間のようなものにも見えた。もはやあれは山羊ではなかったのではないだろうか。
闇も、人も、心も、夢も、
すべてが私と同じだった。
ただ、私の作り上げたものだけが、どこか歪に転がっていた。
きっとそれを見ている私の眼は、どこまでも冷え切っていたに違いない。
それが私にわかっていたから。わざとそうしたから。
どうせ、夢だ。

そう、夢なのだ。


色づいた世界に目をやれば、変わらない世界が、どこか進んでいるようにも見せつつ穏やかに朝を迎えていた。
あたたかくやわらかい布団から出るのはちょっとした苦痛だ。朝の光が目に痛い。まだ眠い。
そんなあたり前の感覚の存在が酷く感慨深い。

最後の「これまでの私」を見終わったワタシは静かに世界へと告げた。



「オハヨウ、ハジメマシテ、新しいワタシ。」
作品名:monochrome 作家名:八樹