Dimension-ZERO
「ああ、条件付で」
「うっそんな…なんでもなんて…」
コイツが、なんでもなんて条件をつけてくるってことは、絶対ろくなことじゃない。
と直感で怪しんだ青年は口を噤む。
しかし、それは予想の範疇であるようにカイは普通にそのまま話す。
「アーダーに大目玉食らって閉め出されるのと…選べ」
にこ、とさわやかに笑んだカイの笑顔はこんな状況でなければ、万人受けするだろう、
それはあくまでも、こんな状況じゃなければ、だが。
悪魔だあああっと、書物を抱えながら絶望したように青褪めた青年は、泣きそうでもある。
焦燥に駆られるように世話しなく目線を動かして、
なかなか決めかねている青年に、カイがトドメとばかりに男達に捲くし立てた。
「あ、痺れ切らしたら、いつでもあいつの持ってるコード持ってっていいっすよ」
その言葉にハッとして、ひとりの動作を合図に、四人の男達が青年の持っている書物めがけて突っ込んでいく。
それでも渡すまいとぎゅうっと力を入れて抱きかかえながら彼は叫んだ。
「やだあああっアーダーさん捨てないでえっ!」
金属と金属とがぶつかり合うような、高い音がひとつ大きく響き渡る。
その音に、道行く人が立ち止まり、野次馬となって寄ってくる。
涼の後ろはすぐに観客席の最前列になった。
キチキチと相手を押しやる力に刃物が悲鳴を上げる。
青年と男達の間に立った空と同じ色の瞳の青年は涼しい顔をして四人分の圧力を受け止めていた。
それは涼が見たことも想像したこともない戦い方。
ありえないことに、カイの身体を守るように数本の両刃剣が彼の周りに浮いて、
意思でもあるかのように、彼の盾となっている。
「ひとつだけだから」
銀髪の青年が半ベソで彼の背に向かって言うと
「おう、なんでもな」
と、彼にとって、より重要な方を提示して、
そして笑った。
作品名:Dimension-ZERO 作家名:りぃ