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鉄とヒマワリの匂

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鉄とヒマワリの匂


その子は泣いていた。
 掲示板で知り合った男に乱暴されたのだという。
 それでも彼女はそれをやめようとはしなかった。
 寂しさ、苦しさ、悲しさ、悔しさ。
 負の感情を制御するために、彼女は知らない男達に抱かれた。
 どうしてそういうことをするの?
 僕は尋ねた。
 これが、私だから。
 そう答えた彼女の目に僕は映っていなかった。
 映っていたのはただの男。
 彼女の世界のその他大勢の中の一人。
 それは僕ではない。
 僕の外見をした誰か。
 お願いだから、そんな目で僕を見ないで。
 お願いだから、そんな顔をしないで。
 だから僕は、無機質な天井に顔を向ける。
 彼女の目に映った誰かに僕を乗っ取られる気がしたから。
 明日、また来るよ。
 君の好きなヒマワリの花束を持って。
 包帯の巻かれた手が見送ったのは、果たして僕だろうか?
作品名:鉄とヒマワリの匂 作家名:島UMA