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ラベンダー
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novelistID. 16841
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銀髪のアルシェ(外伝)~紅い目の悪魔(3)~

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とたんに章之の目が狂気を帯びた。

……

章之は、燃える建物を背に走りながら思っていた。

(俺、何でやっちまったんだっ!まだやるつもりなかったのにっ!)

章之は止まり、両手をひざに乗せて息を切らした。
…やがて章之は体ごと振り返った。
炎が燃え広がるのを見て、自然に口がほころんだのを感じた。

(今度こそ、誰か死んだかな…。)

章之はそう思いながら、消防車のサイレンを聞きながら炎を見続けた。そのサイレンの音すら、章之に興奮を与えていた。

「今晩のニュースが楽しみだ。」

章之はそう呟いて笑った。

……

章之はアパートに帰った途端、ソファーに倒れ込むようにして寝転んだ。
何か異常に疲れている。

(誰かに見られてなかっただろうか…?)

そう思った。今回は全く無計画で火をつけてしまった。
章之はテレビをつけた。
もう火事のニュースが報道されていた。章之はにやりと笑った。
だが、怪我人がいない…というアナウンサーの言葉に落胆した。

「くそ…誰もいなかったのか…。」

章之はそう呟くと、テレビを消し体を起こした。

(ちょっとひと寝入りしよう…)

章之は奥の部屋に行き、ベッドに寝転んだ。とたんに強い眠気に襲われ目を閉じた。

……

…どれくらい眠っていたのか…。章之は何か息苦しさを感じ、咳き込んだ。

「?…なんだ?」

章之は目を開けて驚いた。煙に包まれている。

「!火事かっ!?」

ベッドから飛び降りて、部屋を出た。

「うわっ!!」

キッチンが火に包まれていた。キッチンの横にある玄関が見えない。
章之はベッドのある部屋に戻ろうとした。

「!!」

何故か、さっきまで寝ていたベッドが燃えている。
窓が見えたが、炎の向こうだった。

「誰かっ!」

章之はその場で回りながら叫んだ。

「誰か助けてくれっ!!」

章之は煙にむせてその場に四つん這いになった。
火が迫ってきている。

「助けてくれ!…俺、まだ死にたくないっ!!」

章之は咳き込みながら言った。熱さで意識がもうろうとしはじめている。その時、炎の中から2本の足が現れた。

「!!」

四つん這いになったままの章之は、視線をその足から上に向けた。
炎と同じような紅い目の男が自分を見降ろし立っていた。両頬には長短2本ずつ傷がある。

「!!悪魔っ!?」

章之が咳き込みながら言った。
紅い目の男は、いきなり章之の首を片手で掴み、そのまま持ち上げた。

「!!」

章之は体が浮いているのを感じた。そして、紅い目の男を見下ろすほどの高さまで持ち上げられた。
紅い目の男が、章之を見上げて言った。

「お前が殺した青年からだ。」
「!?」

章之は目を見開いた。

「自分も会社をクビになったところだった。…死なせてくれたお礼に、お前にも死をプレゼントする。」
「!!」

章之は、足をバタバタさせてもがいた。

「嫌だっ!死にたくない!助けてくれ!」

とたんに手が離され、章之は床に落ちた。
火が章之を包んだ。

章之が悲鳴を上げた。…だが、炎の音にその声はかき消された。

……

「…また、気を狂わせてー…。警察に捕まったはいいですが、取り調べが大変だそうですよ。」

浅野が自宅マンションのソファーで、前に座っているザリアベルに言った。

「死なせなかっただけましだ。」

ザリアベルが、いつものぶすっとした表情で言った。浅野はあきれ顔で言った。

「ですけど…。…あのままだと、心神喪失で放免されちゃうじゃないですか。」
「体が燃える恐怖だけは覚えているはずだ。…2度と放火などしようとは思わないだろう。」
「…まぁ…そうですけどね。」

浅野は紅茶を飲んだ。前でザリアベルも飲んでいる。
いつもならコーヒーなのだが、ザリアベルが飲めないというので、浅野も紅茶に付き合っていた。 浅野はカップをソーサーに置いて言った。

「…でも今回は、あの放火魔を見つけるのに手間取りましたね。…どうしてだろう…?」
「…恐らくだが…。」

ザリアベルもカップを置いて言った。

「悪魔が絡んでいたんだろう。」
「えっ!?…だとしたら「大悪魔(アークデビル)」のザリアベルがわからないくらいだから…もっと階級が高い悪魔でしょうか?」
「…そうとは限らない。俺だって何でも見通せるわけじゃないからな。」
「またまたご謙遜をー…」

浅野がそう言って、またカップを持ち上げ紅茶を飲んだ。
が、ザリアベルは、一点を見つめたまま動かない。

「ザリアベル?…何を考えているんです?」

浅野が言った。ザリアベルは、はっとした顔をして言った。

「今日の晩御飯は何だ?」

浅野は、がくっと体を傾けた。

(終)