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篠原 喧嘩5

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次男が、実家のほうで、しばらく過ごすとやってきた。結婚して、奥さんが出張だとか、次男の体調が悪い時は戻っていたものの、いきなり、ひょっこりやってくるのは珍しい。

「何かあったの? 」

「ううん、別に。」

 奥さんの出張か? と、尋ねたら、取ってつけたように、「そうそう。」 と、頷く。なんかおかしいが、たまに、戻って来たいと思うこともあるのだろうと、母親のほうは納得したが、帰宅した父親も、やっぱり同じ疑問を持った。

「しばらくって、雪乃さんは、長期出張なのか? 」

「うん。」

「どこへ? 」

「さあ? 」

「行き先くらい教えてくれないのか? 」

「ううん、たまたま聞かなかった。」

 なんていうか妙だ。だいたい、息子の嫁は、丁寧な人なので、まず、こちらに当人が出張の連絡をしてくるからだ。日程、渡航先、連絡先と、きっちりと、それらを伝えてくるのが、いつものことだ。

 息子が部屋に戻ってから、自分の妻に向って、「雪乃さんに連絡してみたらどうだろう。」 と、告げる。もしかしたら、出張でないのかもしれない。いや、出張だとしても、連絡先はわかるだろう。

「ああ、やっぱり、そう思います? 私も、明日、昭彦に連絡してみようと思ってたんですよ。」

 長男のほうは、雪乃の緊急連絡先を知っているはずだ。何事かあったのなら、こちらも、それ相応の対応を心がけないとならない。





 翌日、次男が出勤してから長男に連絡した。長男のほうにも、何の連絡もなかったらしい。こちらから連絡してみる、という。

 小一時間ほどして、長男から連絡が入った。

「うーん、なんか、ちょっとモメたらしいんだ。気が済むまで、うちで預かって欲しいってさ。」

「はあ? 」

「まあ、いわゆるところの夫婦喧嘩?  ぷいって出て行ったらしいよ、義行は。雪乃さんもびっくりだったらしい。」

「え? 」

「ほら、義行ってさ。雪乃さんには我がまま放題甘えるだろ? だから、気に入らないって怒ったんじゃないかな? 」

 長男の説明に、あーまーなーと、母親も頷いた。他のものには、細やかな気遣いを披露するくせに、雪乃には、割と好きなことを言う。それは、甘えの裏返しだと、雪乃や周囲のものは理解しているから、誰も、それを叱るようなことはしない。

「じゃあ、原因って? 」

「それが・・・・雪乃さんも、どれだかわかんないみたい。」

「はあ? 」

「直接の原因っていうのが、どれなのかわかんないんだって。だから、余計にびっくりしたんだ。」

「何をやったの? 」

「だから、それがいろいろあるらしい。どれも、大袈裟なものではなかったから、首捻るしかないって困ってたよ。」

 原因が特定できないとは、また、なんともおかしな話だ。とりあえず、しばらくは様子をみたほうがいいだろうと、長男は暢気だ。

「誰か義行から直接に聞いている人っていないのかしらね? 細野さんとか。」

 原因がわかれば、両親から、いろいろとアドバイスできることもあるし、さり気なく、気づかせてやれることもあるから、母親は、そう尋ねた。普段から、女房役について回っている細野なら把握しているのではないだろうか、と、思ったのだ。

「いや、細野君には無理だよ。たぶん、橘君なら知ってるんじゃないかな? 」

 生来のお節介とでもいう橘なら、確実に首を突っ込んでいるだろうと、長男は、その人物を指名した。なるほど、と、母親は納得する答えだ。長期療養で自宅で静養していた次男を一番見舞っていたのは、連絡役の細野を除けば橘だったからだ。

「じゃあ、連絡してみるわ。」

「よろしく言っといてよ。今度、飲もうって伝言しといて。」

 長男と橘は仲がいいらしい。いろいろと次男のことで相談していたりしたから、その繋がりで親しく付き合うようになったらしい。





 長男との連絡を終えると、母親は、よしっっと気合を入れて、細野に連絡を取った。直接、橘の連絡先は知らなかったからだ。




作品名:篠原 喧嘩5 作家名:篠義