雲のその先
「悲しくなんかない」
それは強がりだったのかもしれない。
「君が悪い」
それは言い訳だったのかもしれない。
「君の暖かさ、笑顔、仕種、におい。今も、いや、今だからこそ、色濃く僕の中に残っています」
「天真爛漫で、純粋で、少し天然で。取るに足らないことでいつも怒っている僕が、なんて小さいのかいつも思い知らされて」
「ゲームは上手ではなかったけど、何故かカードゲームだけはうまかった君」
「お酒に弱いと言いながら、ワインを飲み、真っ赤になりながら、それでも懲りずに飲んでいた君」
「寂しがりやのくせに、友だちは少ないと言って、いつも僕にまとわりついていた君」
「今はまだ、君はこのあたりに居るのだろう。だから、泣かない」
「君を送るのに、涙は似合わないと思うから、今は泣かない」
「明日、誰もいないところで、ひっそりと悲しみに浸ろうと思う」
「そんなことを言うと、君は、辛気臭いと太陽のような笑顔で言うのだろうけれど、明日だけは許してほしい」
抜けるような青空へ旅立っていく、君へ。
僕はいつ、そっちへいけるのかな。もし、居心地がよければ待っていてほしい。
雲のその先の、青い空の下で。