詩集
『空』
幼い頃は 夜が来なければいいと思っていた
夕闇が迫る頃になると 帰りを急かす声が聞こえて
もっと遊んでいたいのにと 夕陽を恨めしく思った
どうして沈むのと 子供特有のわがままを抱いて
友達と別れて家路を辿った
今は 夕陽の輝きを目にすると嬉しく思う
やっと一日が終ると ほっと息をついている
日の沈んだ後に広がる夜の闇とその静けさに心を寄せて
薄雲を被り燐光を放つ月に 口元を綻ばせる
一人きりになることに安堵の息をつく
家に着くまでの短い時間 空を眺めて歩く
何時か 朝が来ることを楽しみにする日が来るのだろうか
闇を払拭して輝く空に 美しいという以外の思いを抱ける日が
何時か来るのだろうか
人といることを 苦痛に思うことのない日が