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ふざけんなぁ!! 6

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26.あなたの希望は何ですか? 4






「ふっぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!! 静雄さんの馬鹿ぁぁぁぁぁ!!」
帝人は涙目になって、進路志望の用紙をぶるぶる握り締めた。

あの男、一体何時の間に悪戯しやがったんだろう?
第一志望から第三志望まで、くっきりと真っ赤な太字マーカーでバッテンをつけられた上、【平和島静雄の嫁】と、でかでかと大きく書かれるなんて。
こんなのを見られたら最後、職員室にいる先生方の、良い笑い者決定だ。


「すいません。後、竜ヶ峰さんので最後なんです」
集めに来たクラス委員の園原杏里が、申し訳なさそうに手を伸ばす。
だが、帝人は涙目になって、ぶんぶん首を横に振りたくった。

「勘弁してよぉぉぉぉぉぉ!! くぅぅぅぅぅぅぅ。待って園原さん、予備の用紙って持ってない?」
「私は先生に、回収を頼まれただけですから」
「………だよね、うううううう……。じゃあせめて、束の真ん中のどこかに埋めて。一番上とか一番下とかは、絶対止めて」
「ええ、判ってますから」

物凄く恥ずかしい用紙を、諦めとヤケッパチ半分で渋々と差し出すと、杏里が慰めるように頭をよしよし撫でてくれた。
ちょっと嬉しい。

クラスメイト達は、入学式を台無しにした挙句、父兄ともども学校中を走り回らせてくれやがった『平和島静雄』の無茶っぷりに驚き、その男の身内である帝人を忌避した。
幸い、静雄の報復が怖くて虐めには発展しなかったが、面倒をかけさせられるのを恐れ、我が身可愛さに、接点を持とうとする者は皆無になった。
そんな孤立した自分に、かろうじて声をかけてくれたのが園原杏里だ。

それでも、最初はクラス委員だから【竜ヶ峰の面倒を見てやれ】と、担任に言われての冷たい一方的な交流だったのだが、寂しかった帝人は杏里にぺとりとしがみつき、ゴロゴロ懐きまくる事にした。

まず、何かと距離を作ろうとする杏里を、彼女も一人暮らしだと判った途端、お手製手作り重箱弁当で釣り上げた。
正臣に「彼女と友達になりたいから協力して♪」と頼み込み、共同戦線を張り、お昼は屋上でピクニックシートを敷き、三人一緒に同じ重箱を突付いておかずを奪い合い、手作りお菓子を頬張ってジュースやお茶で乾杯し、昼休み中もおしゃべりに花を咲かせた。
帰りだって、用事が無いときは三人いつも一緒に帰宅し、放課後の寄り道を大いに楽しむ事にした。

時間は掛かったが段々と仲良くなり、今ではようやく、この学校唯一の女友達と言える間柄になれたのだ。
そんな彼女に気遣って貰えると、とっても嬉しい。

「ったく静雄の奴、何考えていやがる。ドアホが」
「おおっと、びっくりしたぁ!!」
「紀田君、早いですね」
「おうよ。今日は両手に花状態で、楽しくも辛いお勉強会だしな。不肖紀田正臣、お姫様方をお迎えにあがりました♪」

中世の騎士のように仰々しく一礼する彼に、帝人も杏里と苦笑を零した。
今日から三者面談及び試験週間がスタートなので、来良学園の授業は今週一週間、半日で終了だ。
今教室でお弁当を広げている生徒は面談待ちの者だけで、部活もお休みなので、用の無い者は速やかに帰宅しなければならない。

帝人と杏里は明日、正臣は明後日が予定日だった。
なので、今日は正臣のマンションに行き、夕方までみっちりと試験勉強会をする約束になっていた。

「俺、理数はマジで杏里が頼りだから!!」
「園原先生♪ 私も物理を宜しくお願いします♪♪」
「はい♪ 一緒に頑張りましょうね♪」

背後霊状態になり、ぴとりとそれぞれの腕にしがみついた正臣と帝人を、暑苦しい筈なのに、杏里は優しく笑ってくれて。
彼女は中間テストの時、なんと学年一位の成績だった。
帝人も正臣も一応50番以内にはいるけれど、得意教科の点数も、園原に全く及ばない。
彼女だって一緒に勉強するより、明らかに一人でもくもく頑張る方がはかどる筈なのに、家庭教師ポジションを嫌な顔一つせず付き合ってくれる。

そんなお人よしすぎるぐらい優しい娘にも苦手なものが実はあり、それが自炊で。
レパートリーが味噌汁、カレーライス、シチュー、スパゲッティ、ラーメン、それからレトルト食品、またはコンビニ弁当やスーパーの惣菜と聞いた時、帝人は涙がちょちょぎれそうになった。

都会は便利で、お腹が空いても、お金さえ払えば何処でも食べ物は売っている。
けど、外食やインスタント食品だけでは、体なんて直ぐ壊れてしまうだろう。
健康は失ってからでは遅いのだ。

よって、同じぐらい食生活が悪い正臣も巻き込んで、何かと理由をつけてなるべく三人で集まる機会を増やし、ちょくちょく勉強会を開く事にしたのだ。
正臣はクーラー付の快適な勉強場所を提供し、帝人が其処でバランスの良い家庭料理や菓子を準備し、杏里が先生役。
材料費は折半なので、これなら誰も損はないし、和気藹々の集まりは楽しい。


「でもさ、俺の両親って今アメリカだし。高校一年でまだ一学期も済んでねぇのにさ、先生と一人で面談して一体何を話せって? 受験に真剣になる頃でいいじゃねーか。あーあ、俺水曜、サボっちまうかな。いっそ、お前ら二人も火曜、ドタキャンして俺んち来いよ.そしたら帝人と杏里も家で涼めるし♪」
「こらこら正臣、変な誘惑するなぁ。魅力的すぎるでしょ!!」
一応グーで殴っておく。

帝人も正臣同様、親が埼玉のド田舎に住んでいるため、個人面談組である。
杏里も自分の事をそう語らないが、やっぱり個人面談組のようだ。
持ち時間15分と言えど、お爺ちゃん先生とマンツーマンなんて、そうそう会話が続くとは思えなかった。
タル過ぎる

「ま、帝人の場合は今回、単身上京してきてマジ救われたよな。そんなミイラ姿を叔母さんに見せたら最後、お前速攻で家に連れ戻されてたぜ」
にまにまと口元は笑っているが、手首に巻かれた包帯をつまむ、正臣の目は怖かった。
雷が落ちそうな嫌な雲行きに、まるで蛇に睨まれたカエルのように、帝人は身を強張らせる。

「そうですね。竜ヶ峰さんに暴力ふるうなんて、絶対あの男は許せません」
つられて杏里まで、きゅっと唇を引き結んで俯き、全身ぷるぷると震わせだす。
確かに、今帝人は包帯お化け状態な惨い姿だ。半袖の制服程度じゃ隠しきれないぐらい、首から足の先まで包帯とシップまみれのぐるぐるミイラ巻きである。


「園原さん、静雄さんも悪気があった訳じゃなくてね」


昨晩から朝にかけて、寂しがりやの静雄にぎゅうぎゅうに抱きしめられて眠った為、全身に新たな青痣が増えてしまっただけなのだ。
不器用な癖に心配性な彼の手当てが、これまた随分大げさなだけで。
この姿で正臣と一緒に登校した時、心配げに駆け寄ってきてくれたのは杏里一人だった。
担任のお爺ちゃん先生は事なかれ主義らしく、ボケて気がつかないふりをしてたし、クラスメイト達だって、帝人と一切関りたくないから『どうしたの?』と聞いてくる輩すらいなかった。
心配してくれるのが申し訳なく、また嬉しいから性質が悪い。


「私、もう我慢の限界です。今晩あの男を闇討ちしてきます!!」
「園原さん落ち着いて!! 危ないから。静雄さんに喧嘩なんか、絶対売っちゃ駄目!!」
作品名:ふざけんなぁ!! 6 作家名:みかる