小さな鍵と記憶の言葉
Prologue
その日は至って普通の一日で、朝時間通りに目を覚まして、同じ時間の同じ路線バスに乗って学校に向かった。どうせ変わらない明日が来るんだろうとわざわざ考えるまでもなく信じて疑わなかった。
違うことといったら、一時限目の英語が急遽自習になったくらい。特に驚くことでもない。
だから真っ青な湖のほとりで「君だ」と言われても信じることはできなかった。
ずぶ濡れのまま抱き締められて。
目の前の彼も、その言葉も。
悪い夢だと思う以外に、選択肢はあっただろうか?
作品名:小さな鍵と記憶の言葉 作家名:篠宮あさと