好きなくせに馬鹿みたい
「あのさー」
「あ、?」
「彼女欲しい?」
「はあ?そんなんいいから手動かせよ、誰のせいで掃除させられてると思ってんだ」
「あー、俺のせい?」
「『俺のせい?』じゃねーよ、お前のせいだ!」
「うーへー、だってさーあいつ、うざかったんだよ」
「だからってクラスメイト泣かせんなよ」
「うーん、でも売られたケンカは買わないとねー」
「いや、だからって泣くまでボコることねーだろ」
「やー、ねーだってさあー」
「だっても糞もねーだろーが、止めに入った俺まで先生に見つかるし、こうしてお前と二人でなにが楽しくて社会科準備室掃除しないとなんないんだよ、もう散々だ」
「ごめんねー、巻き込んだことはあやまるー」
「掃除のことも謝れ」
「ねえ、欲しい?」
「あ、何が?おまえいっつも唐突なんだよ」
「かのじょー!、欲しいのかな―と思いましてお聞きしました」
「うぜえ、その喋り方」
「いやー、ほら俺ら思春期じゃん?」
「…高3なのにか?」
「まーねー、で?」
「で?」
「だから彼女!」
「…、なんでおまえに言わないと駄目なんだよ」
「もう1月だよ!卒業じゃん!俺とお別れしちゃうじゃーん!だからさー最後くらい聞きたいなあ、と思ってさ」
「別にお前と同じ大学行くんだから最後じゃねーし、仮に最後でも、もっとマシな質問なかったのかよ」
「俺にとっては重要なの!」
「は、なんで?」
「あ、いやー、ま、まあそれはいいじゃん!」
「…、今の時期ってのもあるけど、彼女作っても進路別れちまったら結局終わりだし、やっぱ付き合うからにはちゃんと付き合いたいし、今はいらん」
「じゃあさー、俺らと同じ大学行く子に告白されたら?」
「は?いや、いきなり告白されてもなー、少しは仲良くなけりゃうーん、てなるけど」
「じゃあ、同じ大学行く子である程度仲良くて告白されたら?」
「おい、何が言いたい」
「…、」
「康太!」
「…もし、それが男だったら?」
「あ?声小さくて聞こえないんですが」
「…、好きだよ恵介」
「はい?」
「ああああああああああ!」
「うっわ!いきなりでかい声出すなよ!ビックリすんだろーが!」
「あはは!なんでもないよ!ごめん、ごめん」
「ったく、聞いといてなんなんだよ、真面目に答えた俺がバカみたいじゃん」
「まー、ねえーそんな事より早く掃除終わらせよー!俺ラーメン食いたいんだよねー」
「なっ、お前が話しかけたんだろーが!ふざけやがって」
「わー!箒振り回さないでよー!殺されるー!」
「逃げんじゃねー!」
好きなくせに馬鹿みたい
(言えないよ、そんな『好き』なんて)
お題元 確かに恋だった
作品名:好きなくせに馬鹿みたい 作家名:たなか