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りんみや あんにゅい3

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「別に、おまえと瑠璃さんの行きたいところでいい。みやも俺も、旅行はしてないから、どういう場所があるのかわかんないんだ。」
「国内のほうがいい? 」
「どこでもいいよ、本当に。真理子が行きたいところでいいんだ。今まで、真理子も我慢してたんだから、ここらで、瑠璃さんに我侭のひとつもぶつけてやれ。嬉々として、準備してくれる。」
 姉は、弟の病気で随分と割を食っている。ずっと保護者たち全員が、病気の子供にかかりっきりで、真理子のほうは、どうしてもおろそかになっていた。特に、自分たちはそうだ。申し訳ないと思うものの、それでも時間が取れなくて、金銭的なことでしか、真理子に与えられなかった。
「我慢はしてない。」
「でも、俺も瑠璃さんも、みやのことで手一杯でさ。真理子のことは、後回しにしてたぞ。」
「でも、パパもママも佐伯の両親も、みんな、あたしのことを心配したり、連絡してくれたりしてたわ。月一のパパとのデートも、ママとたまに買い物してたのも、お父さんやお母さんが、あたしのところへ泊まりに来てくれてたのも、全部嬉しかった。・・・我侭してたと思う。みやくんよりも、あたしのほうが・・・ちゃんと学校に通わせてもらって、お小遣いもらって、好きなことしてたもの。」
 考えられないくらい余裕のある生活をさせてもらった。今までの生活は、一体なんだったのだろうと思うぐらいに、だ。ちゃんと家族として、自分は受け入れてもらって、家族として接して貰っている。これ以上の我侭なんてものはない。弟が屋敷で病気の治療をして、屋敷から出られない生活をしていたことから考えたら、自分はなんて恵まれているのだろうと思う。
「良い子の返事だよ。おもしろくない。もうちょっと、悪い子になれ。」
「もしもし? パパ。」
「俺が考えたって、真理子は我慢してたとしか思えないぞ。だいたい入学祝とかさ、卒業祝いとか、そういうのリアルタイムで祝ってないんだ。それだけでも、おまえ、怒っていいことだ。」
「仕方ないでしょ? みやくんが具合が悪い時に、そんなことできないんだから。」
 実際そうなのだから仕方がない。具合が悪くて高熱で臥せっている弟を無視して、お祝いしてもらっても嬉しさは半減だ。だいたい、弟は、そういうことを気にする困ったちゃんなのだ。ちょっとでも、そんな情報が耳に入ったら、絶対に無理してお祝いしようと言い出す。弟が世間のことを知らなくてよかったと、真理子は本気で安堵したものだ。知っていたら、その時期になったら気にするはずだからだ。幸いというか、弟は、ほとんど世間常識なんてものとは無縁の生活をしていてくれたから、時期を知らなかった。だから、具合が良い時を見計らって、執り行われていたお祝いとか誕生日なんてものを、本当に嬉しそうに参加していた。
「あたし、みやくんが大好きなの。だからね、みやくんが笑って、ごはんを食べてくれていたら、それが一番嬉しかったのよ。」
「欲のない。」
「欲は一杯あるわよ。ママにお祝いに、いろいろ買ってもらったもの。」
「いや、そうじゃない・・・ごめん、ちょっと横になる。」
 ごくごくと缶コーヒーを飲み、パパは、ちょっとふらついて横になった。しまった、と真理子が慌てるのに、軽く手を振る。
「いいから、気にするな。どうも、この貧血っていうのは慣れない。」
「それは貧血ではありません。いいから、目を閉じて。」
「帰れよ、真理子。」
「いや。パパの看病するの。」
「いらない。」
「我侭だからね、あたし。やるといったらやるの。」
「そういう我侭はいらん。瑠璃さんみたいなこと言うなよ。」
「だって、あたしはママの娘なんだもーん。諦めてね、パパ。」
「やなとこだけ似るな。」
「うふふふ・・・・今の台詞、ママに告げ口してやる。」
「はんっっ、そんなもん。・・・・・どうってこともない。」
 もはや、この無頓着さがとんでもないと思う。バレないように、缶コーヒーを捨ててくると、真理子は席を立ち、少し部屋を無人にする。たぶん、自分がいれば、りんは退屈させないようにと、話しかけてくるのだろう。そういうことはいいから、寝てくれと真理子は頼みたい気分だ。
作品名:りんみや あんにゅい3 作家名:篠義