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フレンドボーイ42
フレンドボーイ42
novelistID. 608
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偽善者賛歌21「脱毛」

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 毛を失った猫のようにふらついて、帰る。実家に。
 「…おかえり」
 「ただいま」
 もう家族だから、普通に敬語なんて使わない。
 「帰るなら連絡してくれよ。何も出すものないとか親として情けないだろ」
 「いいよ別に急だったし」
 「だから親としてやることぐらいさせてくれっての。どこまでいい子ちゃんになる気だよ」
 「苦労は買ってでも…って今の年のお父さんがすることかなあ」
 「…まあ、とりあえず、味噌汁ぐらい飲んでってくれ」
 古巣が厨房にたつと、火をつけて、ご飯を暖めては冷蔵庫の中にあるクオーターキャベツを切って、ノンオイル青紫蘇ドレッシングをかける。
 「メインディッシュがねえから何だったら缶詰でも出すか?」
 あらかた用意すると彼は言うのだが、そこまで急に来たのに図々しくないかと考えていると、
 「子供は図々しいものだろうが。俺も…図々しかった…はずだ、うん」
 「図々しくなかったんだ」
 「…」
 「なんでまた」
 「いや、だって親がそんなに家にいないんだぜ?かといって別に忙しい職業なわけでもねえ。それで、大人になるまでゲームとか言う娯楽知らなかったからな。多分同年代の連中より弱いんじゃねえか?っていうか、読書というものが趣味になり得ることすら最近知ったばっかりだ。お前も知っているだろ?あのゴーストライターの。お前あいつも偽善者だと思ったらしいな」
 「…」
 「豆乳ぐらいもらえばいいんだ、まあ大豆アレルギーじゃなきゃ」
 「あれは何で」
 「あいつは偽善じゃねえな、確実に。だって自分は悪人です、っていってたもんな。実際女一人死んでいるらしいから何かはあるんだろうが…後あの豆乳は布教用だよ」
 「えーと、趣味を薦める方の『布教』だよね?」
 「そうだ。うちのアパートには本家の布教している奴もいるけどな」
 「何でこのアパートに住んでるんだろう?他に建物はあるんでしょう?」
 「あそこの団体はそれなりに規模があるはずなのにな。SやKには及ばねえけどな」
 「…とりあえず、そういう人なの」
 「売り上げを増やすことで商品の打ち切りを阻止しようとしているらしいぞ。案外バカなところもあるってことさ。天才はみんな一辺倒だ」
 「でも一辺倒のバカになりきれないと」
 「そこら辺の草になっちまうわけだな」
 「…はあ」
 「まあ、落ち込むこともねえさ。それだけが幸せでもないはずだ。お前は、なにをしたいんだ、っということだ」
 「…」
 「はっきり言うと、俺は寧ろ凡才でいたいくらいだ。中途に変だからこういう羽目になるわけだな。お前も中途に変になるくらいなら平均化してしまった方がいいぜ?まあ、平凡な生活なんぞを求めているならな」
 「どうしたいとか…わかりませんけど」
 「少なくとも、隣の芝生は青いどころじゃねえ。隣の家は王宮、だな」