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WishⅡ  ~ 高校1年生 ~

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 “無理やろか?”と視線で訴えてくる。
「ま、既製の曲だと歌えるのは制限があるし……。いいんじゃねーの、作るのも」
 なんとなく、いずれ言い出すような気がしていた。
「但し、俺には無理だかんな!」
「うん!!」
  

 そして、今に至る。
「部屋に居ねーな、と思ったら……」
 ドアを開けて、慎太郎が航の向かい側に腰を下ろした。
 春休み。航と慎太郎は京都の航の実家に来ていた。“二人揃って遊びにおいない”と言う京都の祖父母の言葉に甘えつつ、各々の家では作業がはかどらない事もあって春休み初日からお邪魔している。
 航の課題はオリジナル曲の制作。慎太郎の課題はブルースハープの練習。部屋に閉じこもるとすぐに心配する航の父方祖父母。近所に音が筒抜けになる慎太郎の家。どちらも家ではやりにくいのだ。その点、京都の家は、姉もいれば祖父も仕事で忙しい。祖母は航だけにかかり切りになる訳にはいかないし、近所の織機の音と祖父の仕事の音で慎太郎の練習の音もさほど気にはならないのだ。
「どこ行ったかと思った」
 気分転換の散歩から戻って来た慎太郎が、自分達の使っている部屋(航の部屋)に戻って来たところ、居た筈の航の姿がなかった。おかしいなと思って探し始めたら、隣の部屋から人の気配を感じた。
「なんか、こっちの方が集中できんねん」
 航が居たのは、自分の部屋の隣の部屋。航の両親の部屋だったところだ。航の父のギターなどが置いてあるこの部屋は、半分物置と化しているだけに人が居座るスペースはほんの少ししかない。
「この、中途半端に狭いっちゅーのが、なんかええねん」
 “貧乏性やなぁ、俺”と笑う航の前にあるレポート用紙を
「どれどれ……」
 慎太郎がサッと取り上げる。
「あ!」
 反射的に取り返そうとする航。
「なんだよ。どの道、俺も見なきゃなんないだろ?」
 笑う慎太郎に、
「そーでした」
 航がペロリと舌を出す。
「♪見上げた空はどこまでも……」
 航の書いた詩を見ながら、なんとなく慎太郎が口ずさむ。
「え?」
 驚く航に、
「あ! 悪ぃ。なんとなく……」
 慌ててレポート用紙を返す慎太郎。が、航が五線譜にペンを走らせる。
「それ、貰うな、シンタロ」
「はい!?」
「出来るやん、作曲」
 クスクスと笑う航に、慎太郎がパタパタと手を振った。
  

 桜の花の頃には、二人は二年生になる。