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クリスマス

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何故か毎年、クリスマスになると物がなくなる。
俺が何時か使おうと思って書き溜めたギャグのノートであったり、冬休みの宿題がまるごと姿を消したり……。
まぁ、俺は別に気にしてはいないのだけれど、やはり、それはいけないよな。と頭の片隅で考える。
しかし、今日はクリスマスイブで浮かれている自分。
何をやっているんだ俺!!
どうして、この日に物が無くなるのか、その真相を確かめるのではなかったのか!
そうだ。目的を忘れてはならない。しっかりするのだ。今夜を逃したら、次のチャンスがおとずれるのは一年後。
一年もたてば、俺のザルのような頭は、すっかりとこの事を忘れているだろう。
今しかない。
俺がどれだけ、あのノートを大事にしていたと思っている!!何故、先生に長時間説教されなければならない!!
今夜、その怨みを晴らすのだ。
12月24日、11時29分。
よくよく考えてみると、このまま、一睡もせずに夜が明けそうだ。
「待てよ……」
物が無くなるから、まさか泥棒にでも侵入されているのではないのかと思いもしたが、そんなはずがない。
俺の居る、このマンションは高いセキュリティーを売りに出している位だし、俺は潔癖症で戸締まりを忘れたことなど一度もない。かと言って、自分が無くしたとは到底思えない。部屋の中は、綺麗に掃除してある。何処に何があるかもちゃんと分かっている。では、何故、毎年この日になると物が姿を消すのだろう。不思議で仕方がない。
12月25、0時。
ガタンッ。
つい、うとうとしていた最中(さなか)、何かの物音で目が覚める。
そして、感じるのは気配。
誰か居る。
「嘘だろッ……。鍵は閉めたし、確認もした。ここは、セキュリティー万全じゃなかったのかよ!」
叫んでしまってから口を塞ぐ。
……もう遅い。
侵入してきた人影が、こちらに近づいてくる。
俺は、3、2、1で後ろを振り向くことにした。
(3…2…1…!)
バッ。
「……ん?」
男だ。
そこには男がいた。

「え?」
俺の目の前に立っているのは男。
しかし、何故、サンタの格好をしているのだろう。
俺が考えている間、サンタの格好をした男は何もしゃべらず、動こうともしない。
俺は、三分後、ようやく答えにたどりつく。
「……まさか、本物のサンタクロース?」
「ご名答」
再び沈黙が続く。
「いや、嘘だろ」
「なぜ、疑う?」
「俺の知っているサンタは白ひげの爺さんだ。青年じゃない」
今、目の前に居る自称サンタは、外見年齢23歳の青年である。
サンタと言われて、疑うのが当然だろう。
「昨夜の事だ。……この世で最も尊敬していた祖父が事故でこの世を去った。俺は、祖父の願いをつぐために、サンタとしてここに居るんだ」
「事故……?」
車にはねられでもしたのだろうか。
少しだけ、この男のことを信用しても良いような気がしてきた。
「昨日、ちゃんと電気をつけていれば、階段から落ちるようなこともなかったのに……」
「おいッ!それ、自業自得だろうが!俺の気持ちを返せ!!」
何故、こんなことになったのだろうか。
「で、サンタなんだから何か届けにきたんだろう?それ置いて、とっとと帰ってくれ」
「そうだな。……まさか、今年は一人でプレゼントを届けにくるとは思わなかったよ。ほら、これがプレゼントだ」
青年は、祖父らしき人物の写った写真を俺に渡す。
これ、遺影……だよな?
「それでは、失礼する」
は?
何、こいつ帰ろうとしてるんだ?
「ちょっと、待て!これ何なんだよ!俺は、プレゼントを置いていけって言ったの!何で遺影を置いていくんだよ!」
「それがプレゼントだ」
「ふざけんな!サンタが遺影を置いていくなんて聞いたことねぇよ!」
「不満か。仕方ない。亡き祖父の写真をやろう」
「だから、いらねぇって言ってるだろ!聞け!」
青年は、遺影を出した袋に再び手をつっこんでいる。
俺の話など一切聞いていない。
「見ろ。去年の写真だ」
その写真には、サンタの格好をした爺さんが何かを置いている様子が写っていた。
ん……?
ここ、俺んちだな。
ちょっと、待て。
この、サンタが持ってるのって、俺の『ギャグノート』じゃいのか?小さく名前が書いてある。
「おいッ!何、サンタなのに人の物盗んでんだよ!!」
その頃には、もう、青年の姿はない。
夜の静けさが戻ってくる。
俺は、しばらくして携帯を手にとった。
「あの、警察ですか?泥棒です」
作品名:クリスマス 作家名:扇屋