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むべやまかぜを 風雲エターナルラブ編2

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 ◆二 混迷
 
 丸山花世は普段は女子高生をやっている。都内の女子高。放っておけば女子大学にエスカレーターであがっていく。何もしなくともいつの間にか大卒になっているのだ。遊んでいても大卒。何もしなくても出席日数さえ足りていれば大卒。だというのに、丸山花世のクラスメイト達はえらく勉学に熱心なのだ。大学は外に。大学はAランク校に。
 早稲田慶応。旧帝大系。医学部であるとか。
 みんな分かっているのだ。『学歴など無用』と言っているテレビのコメンテーターが自分の子供は早稲田慶応に入れていることを。そして連中はコネを使って子弟を電通であるとか博報堂といった一流企業に押し込んでいることを。
 学歴はあって当然。
 良い学校に行き、留学。MBAの取得。外資系企業へ。そうでなければ法曹。きょうび学生の情報量はたいしたもの。
 ちなみに丸山花世は……学歴など無用の長物だというテレビのコメンテーターの意見は最初から聞いていないし、かといって、行儀よく勉強をするクラスメイトを尊敬してもいない。それは物書きヤクザがはっきりと次のようなことを認識しているかである。
 ――学歴とかコネとか……本物の才能の前じゃ無力だよ。
 才能の前ではコネは意味を成さない。コネでは大リーガーになれない。学力もまた同じ。賢しらに点をとったところで、その程度。運命の前では物理のテスト結果に意味などない。
 要するに丸山花世はいろいろな話を聞きすぎてしまっているのだ。
 耳年増……という部分もある。知り合いはみんな彼女よりも年上。海千山千と言って良い連中と付き合っていれば、自然と、ものの見方もひねてくる。ましてや生意気な小娘は自分でも作品を書いているわけで、そういう人間からすると、一点にしゃかりきになっている人間は薄く見える。もちろん、
 ――才能が無い人間は学問やってくしかないんだよ。
 というのがクラスメイト達の声であることは丸山花世も知っている。だが、一方で、こういうことも事実。
 ――運命。そういうのってあるんだよ。ほんとーに。
 小生意気で猪口才なわりには運命を信じる。丸山花世はちぐはぐである。