詩・海シリーズ
『夕海(ゆうのうみ)』
学校帰りの子供たちの
にぎやかな笑い声が響く
その明るさから逃げるように
吹きぬける潮風に髪をなびかせ
一人波打ち際を歩いた
寄せる波に触れぬよう
距離を保って歩く
一歩 一歩
浮かび上がる足跡
振り返れば確かにあるけれど
少し大きな波が来れば
あっという間に姿を消す
初めから
存在すらしていなかったかのように
ふと顔を上げれば
遠く聞こえる夕焼け小焼け
水平線に目をやれば
彼方に消えようとしている 今日
打ち寄せる波に崩された城
それにそっと目を遣り
消えゆく過去に背を向けて
夕闇へと歩を進めた