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苦しい片思い的10のお題より【プレゼントは自分で決めなよ】

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望みのない恋であることは、最初からわかっていた。
 だから、いまさら傷つくなんておかしな話だ。
 最初からわかっていたことだった。
 私は彼の彼女にはなれない。たとえ彼にこの先永遠に彼女ができなかったとしても、私は彼の彼女にはなれない。もしかしたら、という希望すらなかった。
 彼女へのプレゼントを一緒に選んでくれないかと、言われたのは昨日の話。いいよ、と私はごく気軽に返事をした。気軽に返事ができたと、自分では思っている。彼もきっと私の返答を気軽に受け止めたはずだ。それは、あまり嬉しくない事実。
 彼とは、私が生まれる前からの付き合いだった。いつも傍にいてくれた。助けてくれた。優しかった。恋をするには十分だったのだ。それは刷り込みのような感情だったのかもしれないが、この恋心に嘘はない。
 私は、十六年という人生の中で幾度も失恋をしてきた。その失恋を知る人はいない。当然だ。誰にも言っていないのだから。この辛い気持ちを誰かに話してしまいたい、アドバイスなんていらないからただきいてほしい、知ってほしい、そういう欲求がないわけではない。だけど、誰かに言ったが最後、それが周知されることは私にとって最大の恐怖だった。もし万が一彼の耳にでも入れば、私は彼の一番近いポジションすら追われることになる。
 彼の彼女になれないのならば、私はずっと彼の一番近い人でありたい。その願いがとても汚いものだと知っている。
 あと五分で、私は家を出なければならない。この世で私が一番憎む女のためにプレゼントを選んでやらなくてはならない。ムカデや、ゴキブリや、ゲジゲジや、怖気の走る気持ちの悪い虫をぎゅうぎゅうに詰め込んだ箱をその女にくれてやることができたら、私の気分はいくらか晴れるだろう。実行したりはしないけど。彼にばれたら絶対に嫌われるから。……いや、彼はそんなことをしでかす私すら、嫌わないのかもしれない。一言怒って終わらせるのかもしれない。彼は酷く優しい人だ。いっそ嫌われたら楽なのに、でも彼に嫌われたら私は生きていけないのだろう。
 私がこの恋心を伝えることは一生ない。あってはいけないことだと思っている。
 今、部屋の扉がノックされた。約束した時間ちょうどだ。
 私は今から、私が一番憎い女へのプレゼントを、私の一番愛する人と選ばなければならない。とんだ拷問だ。けれどその拷問すら、私が選んだものだった。
 私は、私以外の誰かになることができればいいといつも願っている。
 私は、彼の妹以外の誰かになれればいいと、いつも願っている。