この遊びの名前は「グリコ」です。
この遊びの名前は「グリコ」です。
帰り道の、人がいない田舎駅。そこで丁度、階段に差し掛かった時だった。
「そういえば昔さ、階段でじゃんけんして遊ばなかった?」
「・・・・・あぁ、あの勝った方が何段ずつか上がっていって、最初に上がりきった人の勝ちってやつ?」
「そうそう。グーで勝ったら「グリコ」で3段、パーなら「パイナップル」で6段、チョキなら「チョコレート」で6段」
「つーか最初にもっとわかりやすく言えよ。で、それがどうした?」
何となく察していながらも聞く。
「やろうぜ、今!」
「却下。俺は帰りたい」
まぁ、聞くだけだが。
そこで足を止めていたことに気づき、再び足を動かした。
「えー、なんで」
「誰が男同士でそんな遊びするんだよ。子供ならまだしも」
階段を勢いよく駆けあがる。
「あ、ちょっ、置いて行くなよ!」
その俺を、後ろから駆けあがって来た友人が引きとめた。
「っと、危ないだろ」
「ごめんごめん。なぁ、ここからでもいいからさ、やろうぜ?な?」
「・・・・・・・・・・」
はぁー、と軽く溜息をつくと、掴まれていた手を離させて「ここからだぞ」と言った。
どうせ後数段だ。
「よっしゃ!じゃあ早速!じゃぁーんけーん!」
ポン!
「よし勝った!えーっと、チョキならち、よ、こ、れ、い、と、・・・・・・って、あれ?」
「満足したか?」
そう言って、ぽん、と同じ高さにある頭に手を置き、ポカンとしている友人を追い抜いた。
「ちょ、だから置いてくなって!・・・・・・あ!なぁ」
「ん?」
「俺が勝ったから、なんか奢って」
「・・・・・・・・いいぜ、なにがいい?」
「愛のこもったチョコレート」
次の瞬間、スパーン!という良い音が駅に響いた。
作品名:この遊びの名前は「グリコ」です。 作家名:渡鳥