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フレンドボーイ42
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偽善者賛歌16「草野球」

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哀憐の現在住む住居はアパート外である点というよりも、もともとアパート住民ではなかった。古巣と知り合った日は、およそこのようなものである…子供たちが普段草野球をしているグラウンドにほど近い、それで哀憐がよく利用する自販機が壊れていて、たまたま遠くまである居ていった先で知り合ったところで、哀憐から声をかけた。イケメンでもないし、そもそも平日で、哀憐のように休暇を取って羽休めならぬ骨休めをしていた時であるならともかく、前に数度そういえばコンビニでみたなあ、という男であり、怪しげではあったが、ここで見かけたも何かの縁と話しかけてみたのだ。
 「不用心じゃないか?」
 「そうですか?」
 「平日に仕事に行っているようでもない、すこしコンビニで見かけたぐらいの男に声をかけるとかな、普通の常識を持った成年女子ならやっちゃいけないよ」
 「なんでまた心を読んだような」
 「読んでねえけどな」彼は一度切って手に持った飲み物をとって続ける:「あの店の店長知り合いでよ、俺に『あんたと同い年くらいの美女が居るぞ』とか何とか持ってくるんだけどよ、じゃああんたが告白しろよとかいったら客商売で客が減る事態は避けたいんだっていうから、俺にやられても減るだろうがといったところなんだが」
 「ずいぶんまあいろいろと」
 「いろいろあるよそりゃあ」
 「でも美女ではないでしょう」
 「俺からすると女とか興味ないからな…人間の区分の一つにすぎない。そんなの大学は、とか職業は、とか年齢は、とか性格は、とかそういうもんだろ?俺は人とつきあうのは苦手で、そういうのの周りは当然へんてこりんな連中ばっかししかいないしな」
 「あのアパートによく出入りされてますよね」
 「住んでるとは考えないんだ」
 「だって風変わりなアパートじゃないですか」
 「そして俺はその風変わりなアパートの大也だったりする」
 「あ、あの、えーと」
 「別にいいよ」
 「でも」
 「それよかあんた俺に話しかけたのはなんでだよ?興味とかあるわけでなしに」
 「興味はありますよ」
 「なんだ」
 「恋人はいるのかとか」
 「だから女なんか」
 「それでもそういうの度外視に好きになる人は居たりしないんですか」
 「恋愛に満つまでのは、いないって」やれやれという顔をする:「恋愛で、その次結婚か?そんなもんやったって迷惑かけるだけだろ」
 「誰にですか」
 「その女」
 「…」
 「偽善だ、っていいたいかい」
 「知っているんですか」
 「だからあのコンビニの店長と知り合いだって言ったろうが」
 彼がそれを言うまでその言葉自体を彼女は忘却していた。
 (もしかしたら…)という期待があった。