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最強の足跡

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   最強の足跡

 平和を謳歌する街、磯市。オーシャン地方の磯市である。今日は磯市百年祭が行われる。
このたびの主人公、現在16歳のセイヤはこの日を待ち望んでいた。祭りは3日に渡って催される。屋台が並び、歌い、踊る。セイヤは賑わう祭りを駆け回り、腕自慢の職人が出店する美味を堪能した。オーシャン地方は全体的に食文化が進んでおり、数百年に渡って食文化の最高峰に君臨している。
「やあ、近藤のおやっさん。ここいらで最高のキムチスパゲティをくれ。」
セイヤは近藤の屋台でそう言い放った。
「セイヤは相変わらずだな。キムチスパゲティはあの四天王の一人、リナ様が好んだという珍味。おまえとは気が合うかもしれないな。」
時折時代劇で聞く名前だ。

リナという女剣士が悪党をコテンパンにする内容であり、最近流行りの仮面ブライダーよりもかっこいい。正確には仮面ブライダーが情けないだけだが…。
実を言えばこの祭りでもリナの銅像を崇めるイベントもある。綺麗に彫刻されたリナの像は威厳もタップリだが、なにか身近に感じるものがある。
銅像を積んだ山車が街を練り歩く。年寄り達は山車に向かって拝んでいる。
「リナって、そんなに偉いのかな?サッパリわからないや。」
リナと言えばせいぜい世界初の国民栄誉賞の取得者で剣士だったぐらいしかわからない。むしろ、スカイヤ地方を流れる、ルナ河とふたごルナ河の方が有名だ。このルナという人物はリナのライバルで、河を作ったことで有名だ。当時の女性がヘルメットをかぶり、汗臭いニッカボッカで工事でもしたのだろう。

ルナ河は、今のセイヤでは想像できない方法で作られている。
オーシャン地方では四天王も祀っているが、特にリナを強く信仰している。リナの教えを説く会、つまりリナを神とする宗教では、毎食をキムチスパゲティとし、箸で食べなくてはならないという風習がある。セイヤはキムチスパゲティはともかく、箸は有り得ないと宗教の勧誘は断っていた。

祭りもいい加減盛り上がったところでトラブルが発生した。六代目新島組が祭り…もといリナの像を破壊しようと襲撃してきた。
「その昔わしらをコケにしたリナの銅像なんて焼いてはらいますたい。」
リナの生前はこのグループもリナの傘下にあったが、リナの死後まもなく独立し、もともとの山賊に戻っていた。
祭りは一転して混乱した。逃げ回る者と抵抗する者がいる。セイヤは抵抗する者であった。
「ガキが生意気ですたい。」
新島の構成員がセイヤに襲いかかった。セイヤは体当たりをして構成員の武器を手放した。馬乗りになって、力いっぱいにひたすら殴った。
そんな揉み合いの末、警察が駆けつけ、その場は収まったがセイヤは一緒に捕まってしまった。

「なるほど。君は悪くないと言うのかね?殴ってたじゃないか。」
警察の尋問は理不尽にしつこい。同じ説明をするのもこれで20回にもなる。
「祭りをめちゃくちゃにされてるのに、なんで逃げなきゃならないんだ。俺は街を守っただけだ!」
セイヤはこのあともしばらく尋問されたが、一応は釈放された。



 いくらかのドタバタがあったものの、祭りは無事に終わった。
セイヤは静けさを取り戻した津波区で新島のような輩により対応できるように、剣術の修行をはじめた。
とはいえ、独学では成長の度合いはわからない。やはり道場に通わなければならない。
剣術道場と言えばやはり名門のライラを始祖とする道場がよかろう。そう考えてセイヤは入門した。
剣術のいろはを叩き込まれるがほとんどの話が戦争関連であり、戦争という単語すら縁の無いこの世界でなぜにやかましいのかがセイヤにはわかりかねる。しかし、剣術とは相手を滅ぼすのではなく、大事なものを守るのに使うらしい。自分から切りかかるのは人斬りと呼ばれ、孤独で苦しいようだ。
1日目の修行はみっちり6時間、竹刀に触ることすらない説明だけで終わった。

剣術を始めて数年。いいかげん道場の掃除当番も板についてきた。名門なのに掃除をするという習慣が無い道場で汚れに宣戦布告したセイヤは今日も掃除をしている。
そのかいがあってかセイヤに習って掃除をする門下生もかなり増えた。今日も創始者を超えるべく、誰もが修行に明け暮れている。
「よお、セイヤ。久々に俺とやらないか?」
セイヤの友人が誘うと、
「久々だな。いいぜ。」
セイヤは応えて竹刀を構えた。
先に動いたのはセイヤだった。怒涛の攻撃を浴びせ、反撃のチャンスを与えない。インテリな攻撃とは言えないが、カウンターに誘いこむことすらも難しい。相手のガードが崩れて、ついに竹刀を弾き飛ばした。セイヤの圧勝である。セイヤはいつしか道場では最強の実力を示していた。


さて、現在世界の話題と言えば反国家的な集団の乱立である。魁、仁義商会連合直参と名乗る団体がより集まっている。彼らは強奪を生業としているが、あくどい商売や麻薬の密輸もしている。かつて四天王が切り盛りしていた組織だが時代を経てかなり方針がねじ曲がってしまっている。
「今日も新聞の見出しは仁商連だよ。今回はマウントの六合町が潰されたらしい。」
「昨日はチボーンの首都だったよな」
「毎日話題が尽きないよ。政府は何をしてるんだ?」
その政府は長年の仁商連の悪行をほとんど黙認している。噂では仁商連の武力で犯罪組織をつぶして報酬を渡しているという。昨今政界には『仁義党』という政党まで現れた。なかなかにバカにはできない。セイヤがいつぞや戦っていた新島も仁義党所属、魁仁義商会の傘下にある。

道場主ことタケチはこの仁商連に対抗すべく、決起した。
「まずは我々が先頭に立って政権を取り、舵を取るのだ。仁商連のような、輩を野放しにはできない。武器を取れ、諸君。我々の力で世界を安寧に導くのだ。」
タケチは道場を『タケチ・剣道クラブ』から『世界勤皇党』と改名した。皇帝などどこにもいないのだが、ノリである。
道場の前を人影が通り過ぎた。ブラジャーを頭にかぶり、大型バイクで老人を追い回している。老人は恐ろしさのあまり、杖をついて後ろを振り向きもせずに、一心不乱に前を向いて歩く。タケチは号令をかけた。
「あの、不貞の輩を八つ裂きにせよ!」
門下生が一斉に木刀でたこ殴りにする。ブラジャー仮面の変態は、
「イーッ、イーッ」
と喚きながらあっさりたおれた。セイヤはこの一連の出来事がバカバカしく、
タケチ剣道クラブを辞めることにした。

セイヤが道場を去って数年、やはり毎日の話題は仁商連だが、セイヤの方は独自に悪者を捕まえては警察に突き出し、謝礼で生活をしていた。多くの悪者が口を揃えて仁商連の幹部を語っていたが今のところ、組織ぐるみでの報復は無い。しかし…。
「今日の問題はある男だ。我々の邪魔をし、同胞を次々に捕まえてしまう。」
筋肉質な男、名前は近藤という実質組織のトップ。その近藤の言葉に一同が耳を傾ける。
「その名をセイヤと言う。探し出して斬ろうにも腕が立つ。だが俺達が動くにはまだ小さい。」
そう付け足したのは土方である。
「殺してやるよ。俺にやらせろよ。斉藤、お前の出番はねえよ。へへへ。」
そう述べるのは沖田である。これに対し、斉藤は、
作品名:最強の足跡 作家名:peacementhol