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kisses.【栄口総受】

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06 不意打ち(巣山×栄口)



 うとうと…うとうと……。
 試験前、苦手な数学を教えてくれって言ってきたのは栄口だ。
『阿部には聞かねーの?』
 って訊いたら、栄口は
『阿部は田島と三橋でイッパイイッパイだし──オレは、巣山の方が分かりやすいから、』
 っつってやわらかく笑った。
 じゃあ放課後、一組で一緒に勉強すっか──と、始めたのは一時間ほど前だ。
 お互い問題を解いていって、分からないとこがあったら聞く、という約束で始めたけれど。
 今、目の前にあるのは、シャープペンシルを握りしめたままうとうとと夢の世界へと旅立ってしまっている栄口だ。
 オレは、苦笑いを浮かべて栄口を見つめた。
 ここんとこ忙しかったみたいだし、な。
 テスト前で部活がないといっても、栄口自身も国語関係は三橋や田島に教えてるはずだし、その合間に、テスト後の練習メニューだとかを花井や阿部と相談したりなんかもしてて、学校での自分の時間は少ないはずだ。
 その分、家で無理をしているんじゃなかろうか。
 栄口は授業中居眠りもしないしな……
 時々かくんっと首が落ちて、本格的に危なそうだから、そっとその手からシャープペンシルを抜き取り、その下にあった問題集とノートをよけてやる。
 ──いつだったかな。コイツのことを守ってやりたいって思い始めたのは。
 もちろん、栄口は男で、誰かに守ってもらう必要なんてない。実際、そんな手は必要ないくらい、栄口はしっかりしていて、人付き合いも上手だ。
 だから、これはオレのエゴだ。
 自分の手元に置いておいて、囲ってしまいたくなる。
 他のヤツに笑いかけているのを見るだけで、心がざわざわするのだ。
 それでも、時には無理してしまう栄口をそっと支えてやりたい、そう思って。
 密やかに、想いだけは育んできた。
 なんでかわからないけれど、栄口はオレのことを頼りにしてくれている。それは分かる。それが、恋のそれなのかは、人の心の機微に疎いオレには分からないけれど。
 今日みたいに、阿部ではなく、オレがいいと言ってもらえたりとか。(栄口よりはマシだけど、オレだってそんなに数学が得意、というわけではない。)
 そういうのがちょこちょこあると、やっぱり期待してしまう。
「……ったく、人の気も知らないで。」
 オレは栄口の幼い顔を見つめる。本人は気にしている、小柄な身体。ちょっと三白眼気味な目、やわらかな猫ッ毛。
 どれもこれも、愛しいというのに。
「ん…すや、ま……、」
 不意に名前を呼ばれて、ビクリとして。足をぶつけてしまい机がガタンッと音を立てる。
「寝ごと…か…?」
 栄口に名前を呼ばれただけで、鼓動が早くなって、体温が上がって。自分が自分ではなくなってしまうみたいで。
「さかえぐち……、」
 今では机に身体をあずけて寝てしまっている、栄口を小さく呼ぶ。
「ん…、…えっ?!」
 はっと目を覚まして、身体を起こして。
「ごめんッ、オレ、寝てた?」
 眠い目を擦りながら言う栄口に、我慢できなかった。
「──っ!! すや、まッ!?」
 たった今触れた口唇を手で押さえて、真っ赤になって目を丸くしている栄口に。
 今度は不意打ちなんかじゃなくて、はっきりと分かるように口づける。
 栄口はかかかっと赤くなって俯いて。
 でも、その反応、オレ間違ってなかっただろ?



作品名:kisses.【栄口総受】 作家名:りひと