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フレンドボーイ42
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偽善者賛歌12「鉛筆」

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 気がつくと明石はレポート用紙に論点を書いていた。
1.偽善行為のすべてが悪だというのなら、善人は生まれていないことになるがどうか。
2.そもそもを偽善とするのならば、真の善は存在し得ないのではないか。
3.偽善者になることを仮に悪だというのならば、偽悪者は善なのか。

 しかしそれを説明しうる確たる言葉が見つからないのだ。否、説明ではない。数学的にいえば説明ではなく証明が必要なのだ。
 説明というのは、相手の感情に訴えて理解させるもの。それに対して、果たして証明とはなんぞや。それはつまるところ、相手につっこみを入れさせないために、それが全場合に当てはまる条件であるということを提示すること。…ところが説明の言葉すら浮かばぬに、況や証明をや。

 鉛筆がふるえる。
 これが彼女の決めつける力の強さなのか?

 かつて明石がなぜアパートを去ったのか。それはあのアパートの大家の娘、それこそが哀憐であったからである。
 一度あっただけなのに、大きいインパクトをもたらした。何しろ二人が同時に居るところを目撃しないに、それを知ってしまったのだから。