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犬物語7日間

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月曜日、晴れ。

ご主人様が仕事に行く。
玄関で奥さんから鞄を受け取り、笑顔で「いってきます」。
奥さんが、「いってらっしゃい」と言ったから俺も吠える。
「気をつけていってこい」って。
ご主人様は片手を上げて家を出た。

火曜日、晴れ。

今日は資源ごみの回収日。
同じようなゴミを持った人たちが家の前を通っていく。
奥さんも家から資源ごみを持って出てきた。
太陽の光を受けて、透明のビンがキラキラ光る。
きっちり分けられたゴミたちを見つめながら俺は思う。
人間の世界は便利なはずなのに、ゴミの仕分けに関しては原始的だな………と。

水曜日、雨のちくもり。

ご主人様と奥さんの子供が学校に行くのを見送る。
雨が降ってるから車で送ってと駄々をこねる子供。
当然奥さんは子供を叱った。
やれやれと俺は重い腰を上げる。
「学校まで一緒に行ってやるよ」と子供を見つめれば、今度は奥さんが言う。
「ほら、一緒に学校まで行ってくれるって」と。
その瞬間、子供はランドセルと傘を手にとった。
………犬もラクじゃないな。

木曜日 くもり。

今日は奥さんと一緒に散歩へ出かけた。
天気は悪いが雨は降ってない。どうやら雨は、昨日までのようだ。
途中、別の犬を連れた人間に出会う。
奥さんがその犬の飼い主に挨拶したので、俺も犬に挨拶した。
俺よりも年下。元気な挨拶が返ってきた。
それと同時に、犬が着ていたきらびやかな服が揺れる。
その犬は今はやりの、犬用の洋服を着ていた。
なんとなく俺は、自分の姿を見る。
………今度、ご主人様にねだってみようかな。ちょっとだけそう思った。

金曜日、くもり時々晴れ。

いつもの郵便屋さんがバイクに乗ってやってくる。
若い男。どうやら今年入社した新人らしい。
彼は犬好きらしくて、いつも俺の頭を撫でてくれるから好きだ。
今日も優しく頭を撫でてくれる。気分をよくした俺は、郵便屋さんに言った。
「その手紙、あずかってやる。」
持ってきた郵便をくわえようとしたら、後ろから奥さんに怒鳴られた。
郵便屋さんは苦笑しながら手紙を奥さんに渡す。
なんだよ、手伝おうとしただけなのに………。

土曜日、雨。

雨が降らない屋根の下で、俺はぼうっと向かいの道路を見ていた。
スーツを着て、黒いバッグを持った男が歩いていく。
土曜日なのに仕事の奴もいるんだな………。そう思いながら家の中を見る。
下着姿で伸びをするご主人様と目が合った。

日曜日、晴れ。

昨日とは全然違う天気。
雲ひとつなく、すごく暑い。毛のある俺にとって、こういう日は苦手だ。
ご主人様がおもむろにホースを取り出し洗車を始める。
俺はしっぽを振りながらホースから出る水に飛びついた。
ご主人様の「コラ!!」という声が聞こえたが気にしない。暑いものは暑いのだ。
最初は怒っていたご主人様だったけど、洗車の合間に俺に向かって水をかけて遊んでくれる。
家の中から奥さんの声がした。「昼ごはんよー」という………。
ご主人様は洗車を一旦中断し、家へと上がっていく。
自分のご飯と俺のご飯を持ったご主人様が、縁側に現れた。
「一緒にメシ食うか?」と言ってくれたご主人様に、俺は「ワン!!」と一鳴きした。

俺はこの家族に飼われている。
人間よりも命は短いけど、充実した生活をしてるから、犬でもよかったなって思ってるんだ。



犬物語7日間



作品名:犬物語7日間 作家名:月 桂樹