傭兵と撃剣
「ショウ、ミイー。ワン、ツウー、ゴー!。ユー、ノウー」怪しげな英語とゼスチャーを交え2,3回ゆっくり見せた。通じたらしく。
「OK、センセイ、ワカリマシタ、アタシ、ヤラセテクダサイ」カービーは頷き。
「ワン、ツウ、ゴー」と、二足一刀を見たまま、何度も何度も繰り返した。(うん、様になってきたな~)。カービーに、竹を指差し、耳打ちをした。通じたのか、カービーは何度も首を振り、頷いた。
「よっしゃー、カービーさん、いきましょかー」カービーに、ゼスチャーで伝えた。カービーは射抜くような眼を向け。
「ハイ、イキマス」正眼に構えをとらせたままにして。カービーに背を向けた。
「ワン!」と、声を発し、カービーが上段に振りかぶったのを確かめて、後ろ向きになり、二、三歩離れた。
「ツウー!」
「ゴー!!」と、大声をかけ、振り向いた。
「フューゥー!」刃音が聞こえ、剣線の軌道が描いた輪が、西日を浴びて光っている残像を見た。同時に。
「ポン!」と、小さな音が。カービーが、真っ赤な顔をして、床を転げ回っている竹を、眼で追いかけている姿が見えた。
「うおーう!、やったー!、うまい!、キレイな切り口や~」息を呑んで見ていた門人連中や古市先生らが、それぞれに歓声を上げた。カービーを中心に輪ができた。輪の中で、頭一つ抜きん出たカービーが、あっちこっちボディタッチされながら「ドモ、アリガトー」を連発し、溶け込んでいる。(うん、ようやりよった、怪我のうて、よかった)。
「笑い斬りですよ~」竹の切り口をカービーに見せながら、ニコニコしながら、古市先生が説明している。
「先生!、有り難う御座いました」輪から古市先生が出てきて。
「や~、お見事でしたわ、キレイに抜けましたね(刃筋が通ったこと)!」
「はい、本人が一番驚いてました。何の手ごたえも無く斬れていました、って。先生に言われた通りにしたら、斬れたって、興奮して、不思議そうに言うてました。先生、カービーに何を言ったんですか?」
「うん、そうですか~、まぁ、竹をね!親の敵や思うて、やりなさいって、言うただけですわ」今度は、古市先生が、不思議そうな表情を見せた。
それから、数ヵ月後、古市先生から手紙がきた。礼状と写真が一枚入っていた。写真の裏には「カービー、ポール、ベルモン」とフルネームが記されていた。迷彩服を着た9人の兵士達が写っており、真ん中に、カービーがいた。迷彩服で、見ずらかったが、カービーが両手で包み込むように「笑った竹」を持っていた。追伸として、中東の戦場にて、傭兵より、と記されていた。(傭兵!やったんか~)。