遠くとおく燃える
夕暮れがあんなに。
高さの知れぬほど遠く遠い空。
色は青。
いや、水色?
絵の具であの色が上手く出せた覚えがない。
恐らく色の名前なんて意味がない。
見上げたその先にそれがある。
そう、単語だって本当は本来の意味では無意味なんだろう。
ただ、判るため、伝えるために作られた、空。
いつからか、世界の物事が理屈で見えるようになった。
それを指す言葉、形容する表現。形作る仕組み。
そうやって偉大な偉大な偉人たちの積み重ねた知恵を身につけてヒトは人間になるのだろうか。
ならば、知識を得られず、たった一人のヒトは何になるのだろうか。
言葉を知らず、表現を得ず、仕組みを疑わず。
あるがままに生きるのだろうか。
そのヒトが見る空は何色だろう。
その胸に去来する感情はあるのだろうか。
果たして、人間は進化したのだろうか。退化したのだろうか。
あの時の夕暮れは、
「遠くとおくが燃えている」
本当に、そう、見えたんだ。
空の青さも高さも知ってしまった今の僕には、詩人の戯言にしかならなかった。