萌木まひろ・苦痛不即是寶
アパートの中でもわりとふつうにいるのがAV出演経験ありの女性たちだったりもする。何人かきては数人が引っ越したりしていく。素性のわからない男と結婚するか、もしくは死ぬか。立派に楽しく生きている元AV女優も多くいるだろうが、このアパートの住民には一人もいない。
そして、萌木まひろもまたそんな女性なのだった。以下は萌木の話をする。
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大きな目と小柄でほっそりしたからだだったので、ロリータ系の女優として出演したがそのときのことは今でも苦痛として思い出される。…すなわち痛い。痛いというのは単に上にのっかる男が重いとか言うそういう話ではない。
蹴る・殴る・絞める・縛る・焼く・焦らす・脅す・吐き捨てる・押す・引く・差し込む・揺らす・回す・眠らせる・騙す・迫る・責め寄る・泣かす・くわえさせる・吐き出させる・飲ませる・閉じこめる・監視する・撮る。
いつもいつでも彼女の人権は剥奪された。それで金は天引き。はっきり言って早々女優を儲けさせることはない。それこそ有名になりまくって引っ張りだこになるフリーはともかく、後ろ盾がない人がそのために身を寄せるしかない事務所では萌木のようなロリータ系にはとかく厳しい。そして、なぜそういう風に苦痛になるかというと、セクシー系女優とは違い、いかに弱々しいかを求められるのがロリータ系女優というものだからだ。そして弱い女をいじめるのがそういうものを嗜好としている男共の望みなのだ。
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やめたからって食事も何もかも保障される生活があるわけもない。でもやめないならやめないで苦しみしかない。そういうのをみてだからどうと思う人はいないだろうが。ただその体験は非常に深く根ざしすぎてその経験を小説に…とか言う人はいないだろう。苦しいけれど、だからといって人生の糧にはならない。ちょうど海老蔵が暴走族リーダーと酒を飲んで喧嘩になったのが芸の肥やしにならないような感じで。
そういう中でも笑うしかない自分を笑う。当分アパート生活は続く。
作品名:萌木まひろ・苦痛不即是寶 作家名:フレンドボーイ42