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半神

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 僕が思うに、かたわれである双子の妹は気違いだ。
 別に不幸な生い立ちに会っているわけでもないし、親に不満を持っているわけでもないけど、妹はおかしいのだ。何故おかしいのかと聞かれたら多分、「生まれたときからそうだった」からだろう。
 何故僕は妹を気違い呼ばわりするのか。そりゃあ、行動がどう考えたっておかしいからだ。
 最たる例を言ってみると、僕と妹が七つになったとき、妹は猫を拾ってきた。そんな、結構ありふれた出来事から。

「かわいいでしょ? ね、飼おうよ! 名前もつけてね!」
「うん」
「三毛猫だからミケでいいよね!」
「そうだね」

 そういうありふれた会話を交わして、妹は猫にミルクをやって毛布の上に寝かせた。そのあと僕らも寝室に行って寝たのだが、問題が起きたのは何事もなく夜が明けてから。
 朝起きると妹は既にベッドからいなくなっていた。きっと猫に餌をやりに行ったのだろうと考えて、僕もベッドからずり落ちるようにして起き上がり、寝室を出たのだ、

「おはよう」

妹と猫がいた。猫は泡を吹いて小さく痙攣していた。

「……なにやってるの、ミケ、どうしたの」
「んーとね、いうこと聞かないからタマネギ食べさせた! むりやり!」

 にこやかに笑う妹の手には確かに齧った後のあるタマネギがある。猫は次第に痙攣するのをやめた。

「……かわいそうだよ、ミケ」
「みけ? みけ、ってなに?」
「猫の名前だよ、お前が決めたんだろ」
「そうだっけ? どうでもいいや!」

 やはり妹は笑いながら、動かなくなった猫を窓から投げ捨てた。
 こいつ絶対にあたまがおかしい、と思った。
 そんな僕は妹に、気持ち悪いと罵ることも、近寄るなと拒絶することもできる。実際にそう思っているから。
 だけどもそうしたら、妹は、僕のかたわれは、どうなってしまうだろう。
 きっと妹はこの世界の誰からも愛されることはないだろう。気味が悪いと疎まれるのが関の山だ。そしてその世界には、妹のかたわれである僕も含まれることになるのだ。
 そしたら妹はどうなってしまうだろう。世界を憎んで殺人鬼になるか、絶望に包まれて自殺するか。どちらにしたって散々だ。
 僕だったらきっとそうする。もともとひとつの存在だった、半身でもあるかたわれ。それにすら見放されることがどれだけの苦痛であるか、なんとなくわかるのだ。


 僕が思うに、かたわれである双子の妹は気違いだ。
 別に不幸な生い立ちに会っているわけでもないし、親に不満を持っているわけでもないけど、妹はおかしいのだ。何故おかしいのかと聞かれたら多分、「生まれたときからそうだった」からだろう。
 だけども妹は僕の半身で、妹は僕の一部であり僕は妹の一部であるのだから、きっと僕も気違いなのだろう。


 「そうだっけ? どうでもいいや!」

作品名:半神 作家名:眼ガラス球