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昨日の天気予報の降水確率は70%。予報通り、重く厚い雨雲は今にも泣き出しそうだ。
私は雨避けのために薄手のレインコートとレインブーツを用意する。
この時期、蒸し暑くてなるべくならば重ね着をしたくはなかったが、駅までは歩かなければならない。
仕方がないことだ。

そんなことよりも、私をずっと憂鬱にさせる原因。

それは、マンションを出て大きな通りに出て直ぐの交差点。そこに、雨の日になると決まって立ち止まっている黄色い雨合羽の子供だ。
信号を待っているわけでも無く、誰かを待っているのだろうか、少し俯き加減で男の子か女の子かもよくわからない。
私がこの交差点を通るのは会社へ出社する朝のみ、帰りは買い物で店に立ち寄るのに迂回するのだ。
ただ、その子に会うのは必ず雨が降っている日に限っているということだけ…。

ぼんやりと考えながら歩いていると、やはり一粒、一粒と雨が乾いた路上に滴り落ちてきた。私は慌てて傘を開いて差した。
この道を真っ直ぐ行くとあの大きな通りに出る。胸がドキンと鳴り、緊張が走る。

数日前、昼食で仲の良い同僚とランチを食べていたときのこと。最近のニュースからの流れで何故か都市伝説を持ち出してきた。
ありそうでありえない、そんな噂話などまったく興味がなく聞き流していたのだが、友人の一人の話が私の気をひきつけた。

「これ知ってる?『黄色い合羽の男』。全国各地で目撃されているんだけど、黄色の合羽を着た男を見てしまった人は、後ろを押されて車に跳ねられて死ぬんだって」
「都市伝説にしてはお粗末な話じゃない?しかも黄色い合羽って…今時いないってw」

黄色い合羽。
そのキーワードが私の心に引っかかった。
「ねえ、それって、大人?子供じゃなくて大人が合羽を着てるの?」
「さぁ。もっと条件があった気がしたけど忘れちゃった」

ため息をついた。条件?伝説?人の流した噂でそう簡単に死んでたまるか。
くだらない考えを振り捨て、交差点を見るといつもいるはずの横断歩道の前に例の子供がいない。

(やっぱりね…)
不安が払拭され、気が張っていたのが抜けて安堵すると途端笑顔になる。信号が青に変わり、踏み出した足も軽くなったと感じたときだった。



「俺のこと聞いただろ…」



背中を押されて振り返ったその先、横断歩道の向こう側の黄色い合羽の影を一瞥した、その後私は…
右折してきた大型トラックの角に轢かれ、都市伝説が真実であったと認識をするまえに死んだ。
作品名: 作家名:露寒